2018年2月2日金曜日

雇用主は職場のインフルエンザ流行防止策を取るべし

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インフル大流行は「風邪でも絶対に休まないおじさん」のせい?』と言うエッセイで、明治時代の近代化による影響で、日本に病欠を嫌う皆勤賞カルチャーが定着し、インフルエンザが広がりやすくなったと主張している。特に管理職にこの傾向が強く、「上へならえ」社会なので一般従業員にも無理を強いているそうだ。確かに、こういう傾向はあるであろう。しかし、これは日本社会に限らない。米国でもインフルエンザに感染した従業員は休ませろという話がされている。

日本が「子どもはワクチン接種を受けられず、熱があっても出勤するおじさんでパンデミック状態」と嘆いている人もいるのだが、日本だけではないので安心しよう。米国でも2014/2015シーズン以来の流行であり、州によっては入院や緊急搬送される率は上を行き、2009年のパンデミックを彷彿とさせる状況だそうだ*1。日本固有と思われがちな過労死だが、米国でも管理職は過労死するので、病欠に対する評価も似たようなものだと思われる。なお、子どもはワクチン接種を受けられずはデタラメに近い*2

日米で違いがあるとすれば、雇用主が従業員を管理するという意識が米国の方が強い事であろう。雇用主が悪いと言うことになって、中間管理職おじさんがいけないと言う発想にはならない。確かに、企業内で流行すれば会社利益が失われるわけで、雇用主たる経営者が考えるべき領分と言うのは理屈にあう。USA TODAYで雇用主向けのアドバイスが紹介されていた。ワクチン接種に補助を出せ、感染した従業員は評価を下げずに休ませろ、同時にオフィスで働く人間を減らせ、ミーティングの回数を減らせ、リモートワークを推進しろ、 ノータッチ式ゴミ箱と手指消毒薬とアルコールワイプを提供し、手洗いを奨励し、握手を避けさせ、マスクをさせろ…と言った具合。

中間管理職おじさんを非難しても改善にはならないので、経営者が出来るところから対策していく必要がある。また、流行り出してから策を打つのは無理があるので、業務継続計画のひとつとしてインフルエンザ対策を考えておこう。ワクチン接種への補助だけでも、だいぶマシであろう。厚生労働省も企業向けの啓発活動を行なってみるのはどうであろうか。インフルエンザの啓発ツールのページを見る限り、企業向けのものが無かった。

*1Flu still widespread in U.S., worst season since 2014/2015: CDC

*2延原弘章・渡辺由美・三浦宜彦 (2014)の表によれば、2010/2011年シーズンは13歳未満の過半数がワクチン接種を受けているし、昨シーズンの予防接種による免疫の獲得状況に関する調査によれば5~14歳の抗体保有率は61~64%だった。今年の流行に違和感を覚えるかも知れないが、ウイルスの株による影響が大きい。感染力もワクチン有効率も毎年変わる。過去にはワクチン接種率が9割を超えているのに学級閉鎖が多発する年もあった。

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