2017年5月28日日曜日

加計学園問題:安倍総理のクローニー・キャピタリズム疑惑

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前川前事務次官の証言により官邸からのトップダウンで、加計学園系列の岡山理科大学が今治市に獣医学部の設置が認可された事が明らかになりつつある加計学園問題だが、何が問題なのか分からないと言う人を少なからず見かける。政治中枢にクローニー・キャピタリズム(縁故資本主義)が蔓延っている可能性を示唆していることに気づいていないようだ。トップダウンで下した決定に公益性が認めれらなければ、そうである蓋然性はかなり高い。

加計学園問題が特異なところを確認しよう。

  1. 安倍総理と加計学園が縁故と言えるぐらい懇意である。安倍総理は加計学園系列の大学の監事をして報酬を受け取っており、加計学園は昭恵夫人の慈善事業を支援していたことが報じられている*1。政財界で血縁などでの繋がりは多々あるものの、例外的な案件で、ここまで首相と関係が深い関係者は珍しい。
  2. 加計学園に極めて有利な状況が、安倍政権になってから作られた。2015年6月に獣医学部を増やす方向に舵を切り、2016年11月に都道府県ではなく、関西や四国などの広域エリアに獣医学部が無いことを設置条件にしなければ、加計学園が京都産業大学に打ち勝ち認可を得ることは無かった*2。ここまで政策変更が有利に働くケースは珍しい。
  3. 2015年6月と2016年11月の政策変更が、官邸のトップダウンによるものだと内部文書によって明らかにされた*3。他にも、前川前事務次官が当時、官邸から圧力をかけられていたと言う証言も出てきている*4。元事務次官が作成部署などを含めて存在を証言しているわけで、捏造文書である可能性は低い。官僚が提案し内閣が承認する政策が多いわけで、(これ自体は無問題だが)トップダウンの決定は頻繁では無い。
  4. 2015年6月と2016年11月の政策変更の理由が明らかではない。全国知事会は獣医の数を増やすように要請してきたが、既存の国立大学の拡充を要求していた。要望書では都市部のペット相手の小動物専門の獣医が増加した事が理由に挙げられていたが、犬の飼育頭数は微減、猫の飼育頭数は横ばいで、従来変化がこのまま続くとも農林水産省は思っていないようだ*5。民主党政権時代から検討は始まっていたと官邸は主張しているが、2015年と2016年に方針を決定したのは安倍内閣で責任の重さは違う。そもそも「日本を、取り戻す」と民主党の政策を否定してきた安倍内閣が、理由もなく政策を継続させているのはおかしい話だ。何はともあれトップダウンで決断したのだから、正当な理由があれば、トップが理由を説明できないはずはない。

今の状況では、安倍総理が加計学園の私的利益のために特区制度を悪用したと批判されても仕方が無い。金持ちのぼんぼん同士が留学先で仲良くなり、帰国して一人は政界で偉くなっていき、一人は学校法人を拡大していく一方で、相互にあれこれ支援していたとすれば、とても分かりやすいクローニー・キャピタリズムだ。

2015年6月と2016年11月の政策変更の理由が、これから「官邸の最高レベル」によって明らかにされる可能性は無いわけではないが、今までの安倍政権が説明責任を尽くしてきたかと言うと、そうは言い難い。出てきた“怪文書”の信憑性を落として、官邸のトップダウンでは無かったと強弁する事により、クローニー・キャピタリズムでは無いとしたい思惑が見え隠れする。

官僚が守ってきた従来方針が正しいとは限らないのだから、官邸がトップダウンでそれを覆したのであれば、官邸が堂々と論証すればよい。下手に言い訳をしない方が支持率を維持できるのかも知れないが、政治倫理の面からそれには問題がある。今回の事案が無問題だとしても、次のクローニー・キャピタリズムを防げなくなってしまうからだ。

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