2016年3月17日木曜日

消費税率引き上げの消費抑制効果は言われているほどでは無い

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ネット界隈では強く信じられている説に、消費税が消費を抑制して景気を悪くすると言うものがある。増税すれば誰かの可処分所得は減るので景気悪化要因にはなると思うが、特に消費税にその効果が大きいと思うようだ。1997年の消費税率引き上げ後に急激に景気悪化したと言うイメージがあるかららしい。一方で、欧州では頻繁に税率は引き上げられてきた気がするが、それで景気悪化したとは聞かない。そこで1989年の消費税導入、1997年の消費税率引き上げと合わせて、2014年の消費増税前後の消費を商業販売統計で比較してみた*1

増税前の駆け込み需要は共通して観察されるが、1989年はバブルであったためか反動後は急激に増加していっている。1997年はアジア通貨危機の影響などもあってか長期低迷に陥った。2014年も、反動の落ち込みから回復していないように、一年ちょっと前からのこの期間だけを見れば思える。しかし、2014年だけ観察期間を拡大してみよう。

2012年10月から2013年1月までの水準で横線を引いてみたのだが、2014年9月ぐらいにはその水準までは回復している。増税で実質所得は減っているわけだが、駆け込み需要の反動の解消後から伸びていないだけのようだ。こう書くと、そうは悪くないように思える。ただし雇用が好調*1で労働供給量が増えていて、実質雇用者報酬も増税前の水準を回復している事を考えると、物足りなさはあるが。

増えた所得はどこに消えたのか。チャイナ・ショックなどがあって先行き不透明になったせいで、貯蓄を増やしたのであろうか。高齢化によって、商業販売統計に載って来ない医療費や介護サービス費の自己負担分の支出が増えているのであろうか*3。もっとも経済指標が一貫した傾向を示すわけではなく、商業販売統計と実質雇用者報酬の乖離も大したものではない*4

駆け込み需要があった2013年と比較してしまい勝ちなのだが、その一年前の2012年を基準に考えると、消費税の消費抑制効果は言われているほどは無いように思える。そもそも他の税よりも消費引き締め効果があるとしたら、今の雇用情勢を説明する事が難しい。モノやサービスが売れていなければ、経営者も人を雇うのに億劫になるであろう。

*1家計消費状況調査の方が網羅的ではあるが、家計に対するアンケート調査のためか、信頼性に疑問があるようだ。特にネット・ショッピングのデータを反映できていないと言う疑念が出てきている(日経)。家計消費状況調査と経済産業省の試算では約3倍、差にして8.5兆円の差が出ているそうだ。商業販売統計は必ず帳簿をつけているはずの販売者側からの統計であり、かつインターネット等による通信販売等の販売額も含まれる。

*2雇用情勢の改善は数多くの報道がされていて特別、統計を提示する必要は無いと思うが、過去の消費税率引き上げの影響と比較できるように、景気一致指数の有効求人倍率を上げておく。

*3厚生労働省「医療費の動向調査」を見ると、2015年度4月から10月の医療費は、2014年比で2.8%増となっている。

*42014年10月の消費は2013年10月の水準であったが、2014年10月-12月期の実質雇用者報酬は2013年10月より低かったが、消費過多だと言っていた人はいなかったと思う。

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