2014年12月14日日曜日

マネタリーベースとマネーストックのグラフの描き方について

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定期的に描いてはツイートしているマネタリーベースとマネーストックの推移の二軸グラフに関して、「高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門」と言うブログを書いている菅原晃氏が色々と質問してきた。しかし菅原氏から質問してきたのに、「もう不毛なやり取りはご遠慮願います」と言って関連するツイートを全部消されたので、文句を言いたかったのであろうけれども納得したのか分からない。やはり納得できないといわれたときのために、説明をまとめておきたいと思う。

元のグラフは以下のとおりで、マネタリーベースが急激に変化しているのに、マネーストックは安定的に推移している。両者に強い関係があったら、もっとマネタリーベースのトレンドに変化があるはずだ。

ところが菅原氏はこのグラフの描き方が悪く、Y軸の範囲を狭めれば、白川日銀と黒田日銀の差が明確になると指摘していた。Y軸の範囲を狭めて変化を大きく見せようと言うのは、統計で嘘をつく代表的な方法であるものの、「疑似科学ニュース」でも同様の指摘があったので、あえて描いてみよう。また、白川日銀時代のトレンドを引く。

これを見て黒田日銀になってマネーストックの増加ペースが上がったと思う人は、そそっかしい可能性があるので注意した方が良い。白川時代は、それ以前の福井時代よりも増加ペースが高い。黒田日銀総裁になる前から増加ペースは伸びていたわけだ。全体として徐々に増加している事に注意して、二次近似をあてはめてみよう。

当てはまりが凄く良くなった。なぜ二次近似がよくあてはまるかと言うと、マネーストックの増加率がだいたい一定だから*1。念のためにマネーストック増加率に計量分析をかけてトレンドの変化が無いか確認したが、観察はできなかった。何はともあれ結論は、マネタリーベースの乱高下にも関わらず、マネーストックは安定的に推移しているから、両者に関係は見られない。もしもっと複雑な分析で影響が観察されたとしても、それは大きなものでは無いであろう。

なお、こういう事を書くとマネーストックとマネタリーベースの相関係数が高いと言う人々が出てくるが、時系列データは見せかけの相関を示しやすい(関連記事:時系列データの相関係数はあてにならない)。特にマネーストックとマネタリーベースはだいたいの期間で増加しているので、そのようになる。

リフレ派の皆様には驚きだったみたいだけれども、ゼロ金利制約下でマネタリーベースの増加に効果が無い事は、ノーベル賞経済学者のクルッグマンのIt's ba+k!論文で予言されていたことだし、同じくノーベル賞経済学者のスティグリッツも「量的緩和はすごく大きな効果はなかった。緩和縮小もすごく大きな効果はありそうにない」と言っている*2し、ジョン・ベイツ・クラーク賞受賞者で名目GDP目標政策推奨者のウッドフォードもWoodford(2012)で指摘していることだから、常識的な事項であったりする。だから、そろそろ情報をアップデートされたほうが良いと思う。

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