2014年10月22日水曜日

うわぁ、ノビーがまたやっちゃってるー

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と、経済評論家の池田信夫氏の「アベノミクスの挫折で深まる安倍政権の危機」と言う記事がつっ込まれていた。いつも通りミスの多い記述で、少なくとも四箇所、おかしいところがある。

まず、用語定義。「財政・金融政策で需要を追加しても、供給不足が悪化してコストプッシュ・インフレになるだけだ」とあるのだが、こういう場合は普通はディマンド・プル・インフレーションと言う。池田氏が普通かは存じないが。

次に、会計知識。「日銀は20兆円以上の評価損をこうむる。日銀は86兆円の紙幣をもっているので、それを発行すればいくらでも債務を埋めることができる」は、既存の債務(発行済み日銀券)で損失(評価損)を埋められると言う事になっていて、意味不明。

次に、マクロ金融の知識。「今のうちなら日銀がテーパリングの計画を示しても、すぐ金利が上昇するとは考えにくい」とあるのだが、一般に量的緩和を辞めたらインフレ懸念が下がるので、均衡実質金利が一定でプラス*1とすればタイミングに関わらず、フィッシャー方程式(名目金利=実質金利+期待インフレ率)から名目長期金利を下げると考えられる。「今のうちなら」ってどういう事?

次に、認知症らしき症状。『日銀の黒田総裁は、衆議院の財務金融委員会で「万が一先送りされ、確率は低いが財政への信認が失われば対応が極めて困難」との見解を明らかにした。彼が財政への懸念を表明するのは珍しい』とあるのだが、2013年8月30日に「どえらいリスク」と言う表現で増税先送りに懸念を示している日経)。

全体としてもおかしい気がしなくも無い。「今や完全失業率が3.5%まで下がった日本経済」と言いつつ、タイトルで「アベノミクスの挫折」と掲げるのは無理がある。需要喚起が目的のアベノミクスなのだから、もし池田信夫氏が言うように供給制約が出るところまで来たのであれば、成功と言えるであろう。ここは若い頃に培った左翼的政権批判の精神で、文がねじれているのかも知れないが。

統計情報の取捨選択もありそうだ。「エネルギー価格の上昇」とあるが、原油価格、ちょっと下がっている。2013年09月のWTI原油価格は1バーレル106.31ドルだったけれども、2014年9月は93.35ドルまで12%ほど下がっている*2。「供給制約が表面化」と言っているが、消費税率引き上げが理由かは別にして、鉱工業指数の動きは悪い*3のは無視している。

最後に「日銀はソフトランディングへの出口を示すべきだ」とあるが、それが本当に不明瞭なのか、もう少し考察が必要であろう。日銀の保有国債の大半は短期で、次々に償還期日が来るので、購入量と購入額を下げれば金利を上げることができる。また金利上昇で帳簿上の損失が発生しても、償還期日まで保有していれば見合い資産不足にはならない。そして黒田バズーカこと異次元緩和は2015年4月ぐらいまでの計画なので、そこで日銀は過去のコミットメントから解放され、金融政策の自由度は増す。

問題はインフレ襲来が急激で売りオペをしないといけない状況が出たときだが、その可能性は低いように思える。ブレーク・イーブン・インフレ率は安定して1%台前半で推移しており、8月のコアコアCPIも2.3%と消費税率引き上げの影響を除けば-0.54%と、むしろデフレ気味となっている。また、そんな事になったら、過去の事例からは緊急増税でもしない限りインフレ抑制ができないので、もう日銀が考えるべき状況では無いかも知れない。黒田総裁は日銀でコントロールできないリスクになるから、増税しろって言っている。

*1均衡実質金利がマイナスであれば、非負制約で名目ゼロ金利になっているので、期待インフレ率が下がってもゼロ金利が維持される。

*2WTI原油価格の推移 - 世界経済のネタ帳

*3関連記事:消費税率引き上げの景気への影響はどの程度?

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