2014年6月6日金曜日

で、労働時間の上限規制を無視されたらどうするの?

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労働問題の専門家である濱口桂一郎氏と安藤至大氏が、実効力のある*1労働時間の絶対上限規制を設けるように主張している*2。日本では労働時間の上限規制は重視されて来なかったのだが、人間が一定期間で健康的に働ける時間には限度がある。そういう意味では自然な規制で、彼らの主張も理解できるのだが、制度設計の面から見ると疑問が残る。

この上限規制の対象者は、残業代ゼロ制法案と一般には理解されているホワイトカラーエグゼンプションの対象者に限らないのだが、産業競争力会議の改革案を受けての事になっていると思う。ホワイトカラーエグゼンプションでは残業代とその割増賃金と言う経営側の労働時間削減効果が無くなるので、労働時間の上限規制の役割がより重要に鳴ってくる。しかし、現在の改革案では労働時間の上限は政府がガイドラインを示す程度で法的強制能力が無い。

この事に対して濱口氏や佐々木亮弁護士など労働問題の専門家が批判している*3のは理解できる。ホワイトカラーエグゼンプションを導入するのであれば、労働時間の上限規制を設けないと過労死などが増加する可能性は低くないであろう。だが、これらの批判には判然としない点がある。労働時間の上限規制を無視されたら、誰にどのような罰則を与えるべきなのであろうか?

罰則規定がなければブラック企業の経営者なんて露ほども気にしないであろうし、かと言って経営者を死刑にしてしまったら企業存続が不可能になって、逆に労働者が困るかも知れない。どうやって規制を経営側に守らせることができるかまで考えないと、労働時間の上限規制を主張しても、受け取る側には説得力が無い。実行力のある労働時間の上限規制を主張する人々は、どのような罰則規定を想定して主張しているのであろうか。

*1実行力の無い労働時間の上限規制は現行法にあるので、濱口氏につっ込まれないようにつけておく。

*2残業代ゼロ糾弾路線の復活?」と「労働時間に上限の設定を」を参照。

*3「残業代ゼロ」を考える~ブラック企業撲滅どころか、ブラック企業に栄養を与える世紀の愚策』を参照。

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