2013年11月24日日曜日

特定秘密保護法案はあるべき秘密の基準を裁判所に丸投げしている

このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote
Pocket

国会で議論が行われている特定秘密保護法案*1だが、その規定が濫用されないか危惧されている。スパイ行為などの情報漏洩に対して法的対抗手段を用意するものだが、取材手法を抑制し、内部告発を妨げると考えられているようだ*2。しかし条文を見ると裁判官任せのところが多く、どういうケースで有罪に持ち込めるのかが良く分からない。政府にとっても、報道にとっても、曖昧なのはよくないように思える。

政府にとっては第一条が問題になる。特定秘密の範囲だが『その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある』ものだと書いてある。防衛秘密(軍事機密)であれば議論の余地は少ない気がするが、外交機密などは裁判所が特定秘密と認めないケースが出てきそうだ。

また、第二十一条の『国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない』と言う箇所の解釈によっては、報道又は取材のフリをしたスパイ行為に対して無力になる。戦前の外国人スパイのゾルゲは外国通信員だったので、見逃すことになる。

報道にとっては第二十四条が問題になる。『第二十二条第一項・・・に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、五年以下の懲役に処する』と書いてある。要は特定秘密を話すように勧めた場合は有罪になるわけだ。取材行為のリスクが増えることは間違いない。

新聞記者が技官に「新型のステルス戦闘機はレーダーにどれぐらい映るんですか?」と聞いて、技官がうっかり「鳥と同じぐらいですね」と返事をしてしまったら、二人とも逮捕される可能性があるわけだ。

暗号や作戦行動のなどの漏洩に対する罰則強化、秘密情報の関係機関などへの提供方法の明確化、秘密情報の取扱者の制限の立法化*3と言う方向は理解できるのだが、何を特定秘密に指定すべきかよく練られていない感じがする。

例えば暗号を特定秘密にしており、この期間を無限に延長している。パスワードや暗号鍵が特定秘密なのは分かるが、暗号方式(アルゴリズム)まで特定秘密にする必要はあるのであろうか。また、暗号鍵は定期的に変えているはずだし、暗号方式も実際には時代とともに変化している。どこまで安全保障に必要な措置かは、練られていない。

実際に裁判になれば、特定秘密が安全保障に強く必要か、報道又は取材の自由を侵害しないか焦点になるのは間違いない。この二つの点に関して、特定秘密保護法案は明確な基準は与えてい無い。国会議員が詳細を詰めるのが難しいのは分かるが、丸投げ感がとても強い法案になっているように思える。日本の法律は往々にして条文が曖昧な事が多いわけだが、これでは国民の知る権利がどの程度抑制されるか分からないし、逆にどの程度安全保障が高まるかも分からない。

*1朝日新聞が、特定秘密保護法案に関する記事と法案全文を公開している。

*2特定秘密の範囲が外交やテロ対策に及び広すぎる、その期間が長すぎる、処罰対象に報道関係者や市民が含まれるなどの点が、2013年6月に発表されたツワネ原則と照らし合わせて強すぎると言うことらしい(47NEWS)。

*3現在も身元調査を行うと言う運用はされている(朝日新聞)が、身元調査される方の人権保護と言う面から言えば、立法化しておいたほうが望ましい。そういう面では、ネガティブな要素だけでもない。

0 コメント:

コメントを投稿