2013年11月12日火曜日

文科省の言う「道徳教育」がスカスカな件

このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote
Pocket

政府は道徳教育の拡充をはかる方向で進んでいるようだ(毎日jp)。子供の睡眠時間の拡充になるだけな気もするが、(本当かは怪しいが)社会風潮の退廃に対応するために賛成と言う人々と、価値観の刷り込みだと否定する人々で賛否が分かれているようだ。

具体的に何を教える気なのかが分からなかったが、当面のテキストは「心のノート」の改訂版を用いるそうだ。今の「心のノート」と内容はそうは変わらないであろうと思い、ざっと見てみた。

内容がほぼ無い。妙に小説の一節や格言が散りばめられていて、メンヘラーが喜びそうな何かになっている。例をあげてみよう。

  1. 心で見なければ本当のことは見えないんだよ - サン・テグジュペリ『星の王子さま』
  2. 少年老い易く、学成り難し。一寸の光陰軽んずべからず。 - 朱子
  3. 人間にとって「生きる」とは単に「存在する」ことではなく「よく存在する」ことを意味する。- オルテガ・イ・ガセット
  4. 人間の目的は、生まれた本人が、本人自身に作ったものでなければならない。- 夏目漱石『それから』
  5. 憧れを知る人のみぞ、我が悩みを知る。- ゲーテ
  6. 人間はみな、発見の航海の途上にある探求者である。- ラルフ・エマーソン
  7. 少年よ 大志をいだけ - ウィリアム・スミス・クラーク
  8. 人生なんて考え詰めるほど深刻じゃない……かといって考えただけでわかるほど甘くもない。- 梅田晴夫『未知なるもの』

「権利に義務が伴うように」(P.88)と議論が沸き起こること*1をあっさり書いてあったりするし、文脈の無い断片的なメッセージの集約になっている。

SNSには文脈を無視した一文から想像力を膨らましていっておかしなことになっている人々は多数いるが、そういう人間を作りたいのかと思ってしまう。ともかく、スカスカな状態になっている。

小説や随筆の一文は、別に道徳について考え抜いた結果ではない。それだったら誤解が多い功利主義*2でも教える方がマシな気がするし、ロールズやシンガーの議論を紹介しても良いと思う。社会的責任を認識して欲しいのであれば、最近の青少年の起こした事件について、もっと具体的に法的・社会的側面を解説していってもいいはずだ。

道徳観念がスカスカな政治家が音頭をとっているから、教育内容がスカスカになっていると陰口は叩かないように。

*1例えば乳児には生存権はあるわけだが、代わりに何の義務があると言えるであろうか?

*2関連記事:功利主義入門 ─ はじめての倫理学

0 コメント:

コメントを投稿