2024年1月2日の羽田空港C滑走路上の日本航空516便/A13XJ/A350-900と海上保安庁のMA722みずなぎ/DHC-8が衝突し両機とも大破全損した事故で、国外メディアが日本航空の避難の手際のよさを評価する記事を載せていることが注目されているが*1、日本の航空史に残る大チョンボなので(日本航空のスタッフ以外は)喜んでいる場合ではない。
調査報告書はもちろんまだ出ていないが、事故の原因はかなりの確度で分かっている。管制の交信記録があるからだ*2。海上保安庁のMA722の機長が、管制の指示のhold short(滑走路手前での待機)をline-up and wait(滑走路内での待機)に聞き間違えて滑走路に進入し、ほぼ同時に管制に34R(C滑走路を南方向から進入)でcleared to land(着陸許可)を受けたJAL516が滑走路に進入して衝突、MA722が爆発炎上し、JAL516も炎上したと言うのが、交信記録が示す経緯だ。離着陸における管制の聞き間違いはぼちぼちある事故*3。近年は航空機ストップバー灯(STBL)などでヒューマンエラーを防止しようとしているが、この設備は事故当時の羽田空港では何らかの理由で運用停止されていた*4。接地直前にJAL516が気づいてgo around(着陸中断)する余裕がなかったが気になるが、期待してはいけない回避方法だ。
過去にない類の事故ではなく、管制の指示の徹底というイロハの問題。それもMA722の機長の聞き間違いがなければ、ストップバー灯が運用されていれば防げた事故なわけで、大チョンボである。衝突後、日本航空の乗務員が適切に避難誘導を行ったのは間違いないが、喜んでいる場合ではない。ぼちぼちあるヒューマンエラーをどう防ぐか考えていかないと。
追記(2024/02/09 10:13):「海保機は…後ろから来た日航機との衝突まで滑走路上でおよそ40秒間、停止していた」ことが判明したのだが、Boeing 777-300の着陸動画から考えて、日航機がタッチダウンする20秒前には海保機は滑走路上で待機していたことになり、また日航機のコックピットから(少なくとも明るければ)視認できたことがわかる。夜間ではあるが、海保機のポジションライトは見えたかも知れない。
*1乗客全員の脱出「奇跡」 航空機衝突で米英メディア | 共同通信,「血で書かれた」安全基準 全乗客の命を救ったJALの徹底意識、契機は40年前の惨事(1/3) - CNN.co.jp
*2海保機、滑走路進入許可なし 日航機には着陸許可―羽田事故で交信記録公表・国交省:時事ドットコム
*32008年2月16日に新千歳空港で羽田行きJAL502便が、英語の聞き間違いで、滑走路に到着機いるのに離陸滑走開始してニアミスを起こした事故が有名である。
*4Japan coast guard plane not cleared for takeoff before crash, traffic control transcript suggests | CNN
Another factor that could potentially be probed as part of the investigation into Tuesday’s collision is that the runway lights — known as runway stop bar lights and designed to stop pilots from erroneously taxiing onto the runway — may have been out of service, according to publicly available records.
0 コメント:
コメントを投稿