2020年5月16日土曜日

抗体検査キットの性能評価試験から推定される無症者を含む東京都内の感染者数は想定内

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厚生労働省が国立研究開発法人日本医療研究開発機構AMED)に委託した抗体検査キットの性能評価の結果が出てきた。メディアの報道の仕方が悪いせいで、東京の本当の感染者数は人口比0.4%の5万人もいると思い始めた人がそこそこいるようだ。しかし、そもそもランダムサンプリングではない事を無視しても、調査結果を注意深く計算すると0.2%(95%信頼区間0.02%~1.20%)と幅が広い結果になるので、1万人規模の本調査の結果を待たないと何とも言い難い。

抗体検査キットの性能評価」を見ると、複数の製品を同時に性能評価しているが、C社の製品以外は特異度(=1-偽陽性率)を評価していないので、C社の製品から推定しよう。東京都内で、2020年4月の献血者からは500名中2名が、2019年1月から3月の献血者からは500名中1名が陽性となっている。検体番号a, b, cの意味が分からないが、取り合えず無視しよう*1

COVID-19発生前の2019年第1四半期の献血者の陽性は、偽陽性だと考えられる。これから偽陽性率の分布がつくれる。これで偽陽性率を補正した、2020年4月の献血者の陽性率の尤度関数をつくることで、95%信頼区間を計算しよう。感染者も偽陽性者も二項分布に従って発生するとし、陽性者2名なので、感染者0名・偽陽性2名、感染者1名・偽陽性1名、感染者2名・偽陽性0名のときの、2つの確率質量関数の積の和を、パラメーター感染率の尤度とする。尤度関数を0から1まで積分した値で尤度関数を正規化すれば、確率密度関数になるので95%信頼区間を計算することができる。二項分布の区間推定は正規分布で近似することが多いが、感染率が小さすぎて当てはまりが悪いので、尤度関数(下図)から計算した分布から求めた。

出てきた結果は0.2%(95%信頼区間0.02%~1.2%)*2。抗体検査キットの特異度については懐疑的に言われることもあるが、500のうち1と言うのはそこそこ高い数字であり、ここまで感染率が低くないと大した影響は無いが*3、今回はかなりの幅がある推定値になる。中症~重症の3割が補足されているとすると4月28日時点で0.06%ぐらいになるのだが、予想よりはやや多いが、驚くほどの数字ではない。本調査でどうでるかは分からないが、都民全体の感染状況は予想外と言うほどでもない。また、神戸などの患者に対する抗体検査より低いのは、献血する人は健康な傾向があるので病院に行かないためであろう。院内感染、報道されている以上に深刻かも知れない*4

*1説明が見当たらなかった。

*2定性試薬(CLIA法)のE社製品は、0.00%(95%信頼区間0.00%~0.9%)になる。最頻値が端に来る尤度関数・・・

*3(C社のキットを使っているかは不明だが)Doi et al. (2020)の1000名中33名に同様の補正をかけると、3.11%(95%信頼区間2.17%~4.4%)となる。補正前の3.3%, 95%CI: 2.3-4.6%と大差ない。

*4SARS-CoV-2に感染したら通院する同時性もあるため、院内感染が主因とは言えないし、寄与度はぐっと低いかも知れない。

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