2019年7月28日日曜日

女性の性感染症の増減と雇用環境に相関があるように見えるグラフは、統計を使った嘘だから!

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マルクス経済学者の松尾匡氏の『不況は人災です!』の図1-3(p.35)をひいて、本の一節のコピペな気もするが、「雇用状況が悪くなると、性的なサービスによってお金を得る女の人が増え、雇用状況がよくなると減るということを表しているのではないでしょうか」と主張するツイートが注目を浴びていた。いや、それ、『統計でウソをつく法』の典型例だから!

2000年から2007年までのグラフと言うところ、色々とある性感染症の中で性器クラジミアだけを見ているところで怪しいと思わないといけない。

2000年から2018年までのグラフを見たら、ほら、その期間だけ偶然あてはまっていることが分かる。リーマンショック後の不況では生活に困らなかったと言うのは妙だ。

厚生労働省で統計をとっているほかの性感染症と比較してみると、ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマは別の動きをしていることが分かる。性器クラジミアと淋病だけが、性的サービス従事者が感染しやすいと言うことでは無いであろう。

何でもかんでも景気で説明できるわけではない。こういう性感染症は様々な要因によって増減するし、セックスワーカーの方が性感染症に気を使うものだし、実は不況ではお客さんが減るという話もある*1

この話に騙された人々は、不景気の害悪を説くモノに飛びつきやすい確証バイアスにはまっている可能性があるので気をつけよう。

追記(2019/08/03 05:48):コメント欄で示唆されて気づいたのだが、松尾匡氏はウェブページで書籍より後のデータについて言及しているので、紹介しておきたい(性感染症講演とか色平哲郎医師のお話とか生協関係の打ち合わせとか性感染症と失業の最新報告とこの夏の予定)。

2 コメント:

松尾匡 さんのコメント...

お久しぶりです。このツイートは僕を支持してくれている人たちが出しているものですが、『不況は人災です』は2010年出版の本で、この時点ではリーマンショック前までのデータしかありませんでした。

その後これは大阪の性感染症のお医者さんと共同研究になって分析を進めました。その過程については、拙サイトのエッセーで随時報告しております。

リーマンショック後の動きが小さなコブのようなものしかないことについては、このかん風営法の「改正」があって有店舗型業態が規制されたために、業者主導の検査が減って闇に潜った要因が大きいのではないかということになっています。
あと、コンドーム出荷数の推移から推測される日本全体の性交数の減少も大きいのではないかと思います。

なお、ヘルペスとコンジローマは潜伏期間が長く、因果関係を見るには適当ではありません。
淋菌感染症とクラミジアが反応が早いです。

不況での業者数の変動とか、出産前検診で見つかるラグ効果とか、風営法改正前から表に出ないことでは条件が変わらない未成年のケースなども考慮に入れて分析を進めましたが、結局はっきりとつきとめきらずに終わっています。いろいろおもしろいことがありましたけど。

uncorrelated さんのコメント...

>>松尾匡 さん

お久しぶりです。

2010年出版で2007年までしかデータが取得できなかったと言うのは分かりました。

性器ヘルペス感染症の潜伏期間が長いのも分かりましたが、尖圭コンジローマは「通常2、3ヶ月で症状が出るが、6ヶ月という場合もある」https://www.y-cn.jp/std/condyloma.html と説明されているので、何年も動きにラグがあるのは、やはり奇妙な気がします。

まぁ、2000年から2007年までのこのグラフだけでは、結論を出せないと言うのは合意できると思います。

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