2017年1月15日日曜日

韓国政府は2015年12月の日韓合意を破棄できるのか?

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2015年12月の日韓合意に関して、韓国の政治家で日本政府から財団に拠出された10億円を返金し、合意を破棄することを示唆する人々が出ている。韓国側の希望で合意文書が作成されず、日韓両外相共同記者発表のみで内容が示され、その不明瞭な表現で反対派を煙に巻いてきたわけだが、釜山の日本領事館前の慰安婦像設置で反対派の声が大きくなってきた。先日まで国連事務総長をやっていた潘基文氏まで言い出しているのだが、生存している元慰安婦の約7割が同意していることをすっかり忘れていて興味深い。

原則として国家間の合意は拘束するとは言え、後々にひっくり返される事はある。日韓合意がそのような性質のものだとは思わないけれども、今だってトランプ政権がNAFTAの再交渉と言い出している。そして、韓国政府の評判がどうなろうが、日本政府が対韓強硬路線になろうが、とにかく韓国政府が一方的に宣言をすれば、あらゆる日韓の間の合意は破棄することができる。韓国政府は2015年12月の日韓合意を破棄できるのかと言えば、できる。しかし、破棄した後に生じる問題は色々あるのだが、問題の構図がおかしい事になる。

昔の話を思い出そう。韓国における1995年から2007年までのアジア女性基金による「償い金」は、207名中61名の受け取り実績に留まったが、そのときに問題にされた一つが日本政府が出資していない事であった。国家賠償を求めている人々からすると受け入れ難い。2015年12月の日韓合意では、国家賠償である事は認めていないものの、日本政府の予算により事業を行なう事になっており、これが日本政府が行なった妥協であり、元慰安婦が合意を受け入れた一つのポイントになる*110億円を日本に返してしまうと、和解に応じた元慰安婦の立場が無い*2

日韓合意の破棄を訴えている人々にとっては慰安婦像をどこにでも設置できる事が大事で、元慰安婦が和解に応じた事はどうでもよいのであろう。左翼運動家とは往々にしてそのようなものであるから、この点については違和感が無い。しかし、韓国政府は2011年の韓国憲法裁判所の命令に従い、元慰安婦の代理人として振舞っていたはずだ。命令に応じていないことにもなってしまう*3。はたして韓国政府は、2015年12月の日韓合意を破棄できるのであろうか。

*1合意内容自体よりも韓国政府が積極関与し、韓国政府の外交官僚が元慰安婦を説得して回ったのが大きいのではないかと思うが、その説明には入っているであろう。

*2お金が貰えればよいと言う話では無い事には注意して欲しい。それであれば、アジア女性基金で良かった事になる。さらに1998年3月に金大中大統領が、アジア女性基金による「償い金」を受け取らなかった元慰安婦に対して生活支援金として国家補償している。元慰安婦の生活保障と言う観点からの意義は、日韓合意には無い。

*3日韓合意で2011年の韓国憲法裁判所の命令に従ったと見なせるかは、現在係争中でまだ司法判断は下されていない。司法判断の結果、日韓合意を破棄することはあり得る。

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