2016年9月10日土曜日

日本は共働き社会になっているし、北欧も男性が稼ぎ手である

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社会学者の筒井淳也氏が『なぜ日本では「共働き社会」へのシフトがこんなにも進まないのか?』と言うエッセイを出していて、日本は仕事と家庭の両立支援制度が弱く労働規制が緩いため未婚化が進んでいると主張していたのだが、(1)日本は「共働き社会」へのシフトが進んでいない、(2)北欧などで「男性稼ぎ手モデル」が無くなった、(3)男性所得が不足していると言う前段部分が、事実認識がおかしいか、説明不足になっている気がするので指摘したい。

1. 日本も「共働き社会」へのシフトが進んでいる

筒井淳也氏も女性の就業率が上昇していることは認識していると思うが、「共働き社会」へのシフトが進んでいないと言うのは、少なくとも表現としてはおかしい。日本の25歳から54歳の女性の就業率は、2014年と2015年は米国やOECD平均を上回っている(OECD Employment Outlook 2016, P.220, Table C.)。未婚者が増えたのが貢献しているように思うかもしれないが、有配偶の労働力率も年々上昇している(男女共同参画白書 平成27年版 I-2-2図)。

2. 北欧などでも「男性稼ぎ手モデル」

「共働き社会」と言うのは、女性もフルタイムで働く社会だと言いたいのかも知れないが、北欧などでも「男性稼ぎ手モデル」になっている。週30時間未満の労働に従事する男性と女性の比率を比較すると、どこの国も女性が高い。日本は1:3.0ぐらいでOECD平均よりは女性の非正規率が目立つが、英国も1:3.2、オランダも1:3.1となっている。スウェーデンでも1:1.7ぐらいで、多かれ少なかれ「男性稼ぎ手モデル」である(OECD Employment Outlook 2016, P.227, Table H.)。夫婦ともにフルタイム労働者であっても、役割分担はあるであろう。ただし、男女の時間あたりの賃金格差は大きい方のようだ(〃, P.239, Table P.)。

3.「不足する男性所得」と言う妙な問題意識

「不足する男性所得は、女性のパート労働では補えないレベルに達し、結婚が成立する基盤が掘り崩されていく」と書いてあるのだが、70年代や80年代と比較して男性の所得は上昇しているので何か説明不足になっている。何に対して不足していると言えるのであろうか。筒井氏の論理は不明だが、理屈を以下のように考えてみた。

女性の高学歴化と産業構造の転換によって、未婚女性の賃金が上昇した事が、暗に指摘されている。女性は結婚すると、育児などの負担からフルタイムからパートタイマーか専業主婦になり、獲得賃金が大幅に低下する。未婚女性の賃金上昇は、賃金獲得の面から見た結婚のデメリットが、以前よりも大きくなっていることを意味する。このデメリットを相殺するために、結婚相手の男性が女性から期待される扶養負担も大きくなっていると考えられる。一方で、男性の賃金上昇は未婚女性ほどではないので、結婚に必要な所得が不足している男性の比率が上昇し、未婚化が促進された。既婚女性の賃金の賃金獲得能力を高めれば、賃金獲得の面からの結婚のデメリットが低くなるので、結婚を促進できる。

こういうわけで、男性所得と言うよりは、未婚女性と既婚女性の賃金格差の拡大が問題に思える。男女の賃金格差自体は、もっとあった方が結婚が促進されることになる。もっとも男女雇用均等法から未婚女性の賃金を下げる事はできない。労働時間や異動を規制し、育児支援などを行なうことで、既婚女性が働きやすい環境を作り、その賃金を上げようと言う話になるであろう。

4. まとめ

論理がそう明快ではないので筒井氏が何を考えているのかは分からないが、未婚化を問題にしているのであれば、「共働き社会」も「男性稼ぎ手モデル」も「不足する男性所得」も分析概念としては重要ではなくて、未婚女性と既婚女性の賃金の差が問題に思える。もちろんこれも、何か計量分析などでサポートされなければ信じるに値しない。家電製品の発達などにより家事労働を分担する意義が低下した、実家に寄生しやすくなったので家屋など家財をシェアする必要が薄れたなど、他にも説明は色々とできるからだ。

ところで「労働力からの過度の収奪に依存する企業」と言う表現が気になった。こういう表現は「収奪」を定義しないといけなくなるので、「長時間労働を絶対に必要とする企業」のように書くべきであろう。また、欧米社会の転職市場が良く機能していることが前提になっているのだが、失業率を見る限りはそうとは言えない気がする。転職先が遠隔地で、遠距離恋愛になって分かれるような話、聞いたことがあるような無いような。そもそも欧米社会でくくってあるのだが、英米と北欧と南欧では状況が随分異なりそうだし、両立支援と言う観点でみるとフランスとドイツが対照的であることは指摘されている。

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