2015年10月29日木曜日

「多数決を疑う」を疑う

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世の中、多数決など投票で物事を決めることは多いが、様々な投票がどういう癖を持つのか、詳しく考えた事のある人は少ないと思う。しかし、経済学の中には社会選択論と言う分野があり、そういう事を延々と考えている研究者がいる。ネット界隈の経済学徒の間で話題の新書、慶應大学の坂井豊貴氏の「多数決を疑う」は、一般向けに社会選択論の知見を紹介しつつ、さりげなく著者の政治観を世に問う意欲作で、民主主義云々と語りたい人にはお勧めできる一冊である。しかし、疑って読むべきところも多少あった。

2015年10月26日月曜日

ジャンボ・ジェットを操縦する

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Boeing 747-400型機の離陸から着陸までの運用を説明すると言う本『ジャンボ・ジェットを操縦する』の評判が良かったので、拝読した。少し古い本で、もう日本では飛んでいない機材の紹介になっているのが残念だが、操縦方法だけではなく、業務の流れや管制との交信、機材の機能や構造などが広く紹介されており、旅客機に関する豆知識がまとめて手に入る。

2015年10月25日日曜日

インフレ目標政策は、経営者のインフレ期待を固定しない

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日銀がインフレ目標政策を導入したのは2013年と最近のことだが、ニュージーランド中央銀行(RBNZ)は1988年に導入し、もう25年もインフレ目標政策を行っている。しかも、RBNZは目標未達だと中央銀行総裁は財務大臣から辞任が求められる事もあり、日銀のものよりコミットメントが大きい。こう書くと、さぞかし国民にインフレ目標政策が周知されているかのように思うが、実際はまったくそんな事は無いそうだ。

2015年10月24日土曜日

エコノミストにはC++ではなくC言語があっている

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速度が出るからエコノミストには、C++があっていると言うITworldの記事が流れてきた。経済学でもカリブレーションと言って、数値演算で理論モデルの特性を明らかにする手法があり、それを使う人々は計算力の不足に悩まされている。速ければ速いに越した事は無いので、スクリプト言語と比較してC++が良いと言う話だ。そうですかと聞き流してしまいそうなのだが、記事の元になった分析が短絡的で、C++と言うよりC言語があっているように思える。

2015年10月19日月曜日

税制に一家言持ちたい左派は読んでおくべき「税と正義」

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ネット界隈には左翼思想の人々は多く、再分配を強化するように税制を変えようと主張している。また、再分配的な政策を否定する“新自由主義者”を熱心に批判している。しかし、その議論は往々にして直感に基づく素朴なもので、実証的な根拠に欠くだけではなく、倫理的にも脆弱なものが少なくない。しかし、きっちりした議論を展開したくても、自分で考えると辻褄が合わなくなってくる。だから、他人の議論を借りてくるのがお手軽だ。全部がそうではないが、そういう用途で『税と正義』は参考にできる本になっているので、左派の皆様にお勧めしたい。

2015年10月9日金曜日

毎日新聞を擁護して、産経新聞を批判する前に

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統計学を学ぼう。前のエントリーで批判しておいたブログ主から『産経と毎日の「世論調査」のバトルをめぐる不可解なブログ記事』で疑問が出されていた。統計学の勉強をしたことが無いせいか、擁護のためだけの無理な作文になっていて残念な感じになっている。自分が統計について議論してきた事さえ、認識できていないようだ。また、産経新聞の酒井氏の記述にも追加で批判しているが、こちらは厳密な計算をしていないので、適当な批判とは言えない。実際に区間推定値を二つ比較してみたのは評価できるのだが。

2015年10月4日日曜日

産経世論調査を笑う前に

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統計学を学ぼう。ask.fmで『産経世論調査を巡る毎日との批判合戦で産経が「自爆」(笑)』と言うエントリーを紹介されたのだが、毎日新聞・平田崇浩氏が恐らく「意義」を「有意性」と書き間違えて産経新聞の記事への批判を行い、産経新聞・酒井充氏もポイントの掴みづらい反論を行い、そしてブログ主のkojitaken氏が、統計的な有意性が何かを理解しないまま、産経新聞をアホと笑っている。

シリア情勢を理解するために読んでおくべき本

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「アラブの春」から混迷を続けているシリア情勢だが、その見通しの悪さに困惑している人は多いと思う。政府軍と反政府軍による内戦であれば分かりやすいのだが、アサド政権、ムスリム同胞団、シリア自由軍、ヌスラ戦線(アル・カイダ)、イスラム国(ISIL)、ヒズボラと参加勢力が多く、トルコ、サウジアラビア、カタール、イスラエルと言った中東の国々の他、米国やロシアが関わってくるからだ。かなり複雑なゲームが展開されている。しかし、そもそもアサド政権がどういうモノなのか良く知らない。そういう事で『シリア アサド政権の40年史』を拝読してみた。著者の国枝昌樹氏は外交官で、シリア大使を勤めた人だ。