2015年12月22日火曜日

選択的夫婦別姓制度に反対する人は、説得的な反対理由を挙げる必要があるのか?

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最高裁判所が夫婦同氏制を合憲としてから、にわかに選択的夫婦別姓制度の是非について議論が盛り上がっているようだ。違憲でないからと言って、夫婦同氏制が望ましいと決まったわけではないから、議論が終結したわけではない。むしろ、議論はこれからであろう。非嫡出子の相続分差別規定は、何十年とかけて最高裁の判断が変わった。

さて、選択的夫婦別姓制度が姓を同じにするときの不利益がどちらか片方によることが不公平であると明確に主張できる一方で、夫婦同氏制を維持する理由を明確に主張する人はほとんどいないようだ。「家族の一体感を損なう」と言われても、姓が異なると失われる一体感とは何なのか、実の所は明確ではない*1

これに関して、社会学者の久保田裕之氏と他愛のない会話をしていたら、氏の「何であれ挙証責任は自由を制約したい側にある」と言う主張に批判が寄せられた。曰く、「現行それで困っていない人が大多数である時に、『困っていない人』に何の『挙証責任』があるんですか」だそうだ。議論する必要もなく反対で決まりと言いたいようだが、落ち着いて考えると、三通りは理由をつけられる。

  1. 権利論から考えよう。久保田氏が意識していたのは恐らくこれで、個人に関わる事は個人に自己決定権があるべきで、社会がそれを抑圧するのであれば相応の理由を示す義務があると言う議論。パターナリスティックの塊みたいな婚姻制度で、姓の二択だけリバタリアニズムを振り回すと言うのには違和感もなくもないが、既存制度を前提にするとこういう事になるのであろう。
  2. 帰結主義から考えよう。ある政策をしたときの社会状態と、しなかったときの社会状態を比較して、マシな方を選択する。功利主義などの方法。選択的夫婦別姓制度によって公平性が改善する、もしくは誰かの不利益が減少する事が示されている、つまり社会状態が改善する所があると分かっている以上、悪化する点が無ければそれを実効すべきとなる。これは倫理的な基準だから、何となく反対が多数であるだけでは不足で、改善を帳消しにする悪化が要るので注意されたい。
  3. 現実的な観点から指摘したい。最近の世論調査*2では、選択的夫婦別姓制度に賛成が多数であった。少なくとも賛否は拮抗している。これから結婚をすると予想される20代、30代では6割が賛成をしている。反対勢力は高齢者であり、世代交代とともに賛成多数が圧倒的になっていく。まさに説得的な反対理由を明示しないと、反対意見は通らなくなるであろう。なお、往々にして世論は事務的な問題を無視しがちだが、選択的夫婦別姓制度に関しては法務省が検討済みであり、平成8年及び平成22年にそれぞれ改正法案が準備されている*3

なお、反対派は説得的な反対理由を述べる必要があると言うだけで、説得的な反対理由は無いと要っているわけではないので注意。夫婦同姓にある種のナッジ効果があるのかも知れないし、夫婦同姓にしようとしたら勤務先から面倒だから辞めろと圧力がかかり、自由な制度にすると望んだ結果が得られないような事もあるかも知れない。何はともあれ、政府が婚姻制度を設けているのか目的を整理し、選択的夫婦別姓制度が目的に合致しているかを検討すれば、答えは見えてくるであろう。婚姻制度自体に現代的な意味を見出せなくなる可能性もあるが*4

ところで離婚して姓が変わった人に「結婚、おめでとうございます」と挨拶した事のある私は、非選択的夫婦別姓制度に賛成です(゚∀゚)

*1他にも「家族の絆が弱まる懸念がある」と言うが、どういう理屈で弱まるのかは明確ではない。離婚がしづらくなる効果はあるかも知れないが、それが目的の場合は険悪になった家族関係を事務的な煩雑さで維持すべきと主張している事になる。

*2選択的夫婦別姓に賛成52% 朝日新聞社世論調査:朝日新聞デジタル

*3法務省:選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について

*4実践 行動経済学」第13章で、著者は公的婚姻制度そのものを否定している。

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