2015年9月27日日曜日

国際線の航空管制の仕組みが分かる本

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

先日読んだ「航空管制の科学」の続きになる「新しい航空管制の科学」を拝読した。増補版だと思っていたのだが、続きになっている。旧版は国内線とレガシーシステムを中心に置いたものであったが、新版は国際線と人工衛星を利用した新しい航空管制を中心に置いたものになっていた。無印の方で人工衛星を利用した航空管制を紹介できなかったのが心残りのように書いてあったのだが、それを補完するものなのであろう。科学と銘打っているものの、航空管制業務の紹介になっているのは、新旧変わらないが。

国内線から国際線に中心が移った他にも、内容に差異が見られる。例えば、管制官の勤務体制や役割分担の説明は、第1章「国際線で見る最新の航空管制」の関空発シンガポール行きの旅客機への管制への説明の中に簡略化された。軍用機の話は無くなり、旧版第2部の空域の持つ工学的な性質についてはほとんど割愛された。一方で、第2章「航空管制の原理・基準と道具」が追加され、単位などの基礎知識の説明が丁寧になった。全体的には冗長なところが無くなり、第6章に国内線の話が付け加えられてはいるが、国際線はシンガポールへの路線だけではなく、北太平洋や大陸上空を通る路線についても管制の流れが詳しく紹介されており、国際線を飛ぶ民間旅客機の航空管制の話としてまとまりが良くなった。

今の航空管制は、地上にある航法援助設備を基盤としたシステムから、人工衛星を基盤としたシステムへの過渡期にあるそうだ。つまり、汎地球航法衛星システム(GNSS)により、地上設備の位置に制約されずに精度の高い位置情報が得られるようになったため、エリアナビゲーション(RNAV)が現実的に可能になった。これにより同一空間内を巡航できる航空機の数が増え、また遠回りの少ない効率的な航空路が取れるようになったそうだ。また巡航中の航空機の管制だけではなく、地上型衛星補強システム (GBAS)を用いる事により、計器着陸装置(ILS)の代替も可能になっている。レーダー表示などもデータリンク機能によって航空機を自動追跡出来るようになってきており、管制官の負担が大きく減っているようだ。

機体がどこに行ったか分からなくなったマレーシア航空370便墜落事故もあるので、まだまだ管制と航空機間の情報共有のリアルタイム性などに問題があるのだと思うが、超短波全方向式無線標識/距離測定装置(VOR/DME)などに制約された状態から、人工衛星から俯瞰するかのようになって来ており、漫画やアニメの世界に近づきつつあるのが興味深い。素人の夢想に近くなっていっている。

0 コメント:

コメントを投稿