2013年7月17日水曜日

化学物質過敏症におけるある内科医の四苦八苦 - 彼らにはRCTの説明から必要かも

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内科医の@NATROM氏が、(1)化学物質過敏症の存在が十分に明確ではなく*1、また、(2)その治療方法が根拠に基づく治療ではないと批判している*2事に対して、一部の人々が反感を覚えているようだ。

NATROM氏は事細かに反論に答えているのだが、それが存在すると思い込んでいる人々に、実は存在しないかも知れないと説明するのは難しい。しかし、あえて論争をするならば、典型的な実験手順から説明すべきかも知れない。彼らはそこが分かっていないからだ。

1. 今や一般に良く知られる単語の“化学物質過敏症”

化学物質過敏症は、身近な化学物質で、呼吸困難になったり、数日間寝たきり状態になったりする事らしい。全国で100万人も症状を抱えると言われている(J-CAST)。厚生労働省も病名として認めているぐらい、今や身近な存在だ。しかし、身近だからと言って、科学的に立証されているわけではない。

2. 臨床実験な容易な化学物質過敏症だが、存在は不明確

この化学物質過敏症は、主張される原因と症状が明確であるし、発症までの時間が短い。日本だけで100万人も症状を訴える人々がいるのであるから、症状が出ても死んだり重度障害を抱えたりはしないわけだし、被験者にも事欠かない。もし存在が真実なのであれば、以下のような臨床実験を行えば、容易に化学物質過敏症を把握する事ができるはずだ*3

まず、化学物質過敏症を訴える患者をランダムにトリートメント(T群)、コントロール(C群)に分けて、二つの部屋に入れる。次に、T群の部屋に霧と原因と疑われる化学物質を噴出する装置を入れ、C群の部屋に霧だけを噴出する装置を入れる。最後に、一定時間を経過したところで、健康状態を観察して比較する。心理的効果を抑制するために、誰がT群で、誰がC群なのかは、T群、C群、そして実験の実施者には知らせない。

短く書けば、ランダム化比較試験(RCT)を二重盲検で実施すれば、原因物質と症状の因果関係の立証は容易である。化学物質過敏症でRCTを行うのに障害となる事は無い。しかし、現在まで化学物質過敏症が実験で再現されたことは無いようだ。また、疫学データも無いように思える*4

臨床実験や疫学データに頼らずとも、臨床環境医の検査と診断が明確な証拠になると言う主張もあるが、そうであれば二重盲検のRCTでも有意に症状が観察されはずなので、二重盲検のRCTを行わないのは臨床環境医の不作為と言うことになる。

何はともあれ、存在が言われだしてから長い時間が経つが、化学物質過敏症の存在が十分に明確ではない。つまり存在しないのでは無いかと言う疑念が出てくる。また、治療についても同様の手順で効果を立証する必要があるが、未だに立証されていない。

3. NATROM氏は臨床環境医の不誠実を批判

NATROM氏は臨床実験で関係が確認されていないにも関わらず、化学物質過敏症に対しての治療行為が行われて来たことを批判する。病因が治療行為であると言うのは言い過ぎな気もするが、健康を害する可能性の高い“治療行為”への危惧もあるのであろう。

4. NATROM氏への批判者は、科学的な立証手順への理解が無い

NATROM氏への批判を見ていると、化学物質過敏症がどのようなプロセスを経て立証されるべきかと言う、基本的な科学リテラシーが欠如している人々が少なく無いように思える。前段部分で見解が一致していないわけだ。@NATROM氏はいちいち他の病気や個別事例について論戦しているのだが、まずは科学的エヴィデンスとして認められる基準を理解してもらう必要がありそうだ。

化学物質過敏症だと信じて山奥に引っ越した人々は、何を言っても存在が怪しいなんてことは認められないであろうけれども。

*1水俣病と化学物質過敏症は異なる

*2化学物質過敏症に関する私の発言について

*3アレルギー検査もあるので、多少苦しい思いをしてもらっても、倫理的な問題も無いであろう。

*4症状が頭痛などで他の病気と識別がつかない上に、日常生活で触れる化学物質の量を記録している人はいないであろうから、そもそもデータが無いであろう。印刷従事者に胆管癌が多発したケースのように、明確な症状が、明確なグループに無いと容易には識別できない。水俣病も、河川にある水銀の存在と、中枢神経疾患の多発に関係があったわけで、疫学的には明確であった。

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