2012年9月19日水曜日

中国共産党は反日デモを焚き付けているのか?

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中国国内のデモや暴動が、中国共産党の揺さぶりだと言う主張が散見される。報道機関や警察関係者がデモを先導したと言う噂も絶えない。しかし、これは中国共産党が中国人民をコントロールしている事になるので、辻褄があわない部分が出てくる。

中国共産党が反日デモを裁量的に許可しているのは確かだが、日本への揺さぶりのために許可していると言うよりは、中国人民に中国共産党が敵視されないために許可していると考えた方が良いように思える。

1. 中国共産党はデモや暴徒を管理できない

中国共産党や中国政府と中国人民の間には溝がある。中国共産党員は全人口の5.5%を占めるに過ぎず、あくまで少数の支配者階層でしかない事を思い出そう(Web速報「中国情報ハンドブック」第2号)。貧富の格差や官憲の横暴で中国共産党への不満は少なく無い。

中国ではデモや暴動は日常茶飯事で、中国政府はその制御に苦労している。正確な数字は不明だが、一説では年間20万件、一日548件と言われている。暴徒化したときに警官の数が少数だと、反撃も受ける(下動画参照)。

2004年のアジア・カップでサッカー日本代表のバスが中国人サポーターに取り囲まれる事件が発生したが、国際大会の開催国としては不名誉な事件だ。中国共産党に都合よく、デモや暴動がおきるわけではない。

追記(2012/09/22 03:30):今回の反日デモのピークは9月18日とされるが、西安市の公安局は16日に市中心部での集会やデモをすべて禁止する通告を出しており(産経ニュース)、21日にはインターネット上では、「反日」や「抗日」などの言葉を使った検索ができなくなっており、書き込んでも、即座に当局が削除している(読売新聞)。また、深圳などでは19日以降にデモ取り締まりを強化したと言われるが、20日以降も、富士フイルム、ブラザー工業、東芝テック、キヤノンの日系企業の従業員が勤務時間中に反日運動を起こす事件も発生している(日経新聞)。

2. 警察官がデモを先導している?

Epoch Timesが、防弾チョッキと警察無線、そしてキヤノンのカメラを装備した人物がデモ隊に混じっていると報じている。警察官がデモを先導していると結論したいようだが、そうとは言えない。学生時代に酔っ払って多人数で新宿で暴れたことのある人は、警察は暴動を鎮圧しないで証拠写真を撮っておき、後日行動に出ることを思い出して欲しい。なお、共産党員で警察幹部のZhu Gu氏がデモを先導していたと言う記述もあるが、こちらは写真などは無いようであった。

3. 中国共産党の情報統制能力は低下

中国メディアが完全に中国共産党の支配下にあると思っているが、香港メディアとインターネットの普及で情報統制も難しくなっている。

中国で人気のSNS「微博」は当局の管理下にあるサービスで、当局が削除や逮捕を自在にしている印象があるが、当局に不都合と見られる情報も良く流れている。

一国二制度と言う事で、香港と本土での報道には落差があるようだし、中国本土でも中国政府の公式見解を載せる人民日報と、煽動的な環球時報で紙面に大きな差があるようだ。反日報道の口火を、人民日報が切っているわけではない。

4. 中国共産党にある日本の敵であり続ける必要性

反日デモ・暴動は、中国政府は注意深く扱う必要がある。中国共産党は反日戦線を売りに支持を集めた政治集団で、日本に対して屈することは政治体制に強い不満を抱かれる事になるからだ。下手に反日デモを武力鎮圧をしたり、反日報道を取り締まったりすると中国共産党は日帝の手先として見られる事になる。しかも、この傾向は反日教育で強まっている。

大半の中国人は尖閣諸島の領有権を諦めていて、中国共産党が国土防衛で失敗したと見なしており、政府への不満は強い。体制国家なので、最後は天安門事件のように軍事力を行使してでもデモや暴動を鎮圧できると思うだろうが、多勢に無勢になるから現実的ではない。天安門事件で上手く制圧できたのは、デモ隊のほとんどが学生だったからだ。

5. 中国共産党は日本を揺さぶる必要が無い

日本を揺さぶると言っても、尖閣諸島の経済的な価値は低くなっている*1し、外資系企業の誘致や雇用対策が地方の共産党員の主要関心事項であるが邪魔になるし、さらに中国共産党の性癖からすると領土を取るときは電撃作戦で攻めてくる。中印国境紛争は電撃作戦であったし、中ソ国境紛争、中越戦争、中越国境紛争、スプラトリー諸島海戦で事前に攻撃を宣言していたわけでもない。油断した相手を叩くのが戦略だ。反日デモや暴動が尖閣諸島の攻略につながるかと言うと、全くつながらない。

今回の契機になった日本政府の魚釣島、北小島と南小島の購入も、軍事侵攻をしてしまうならば、何の障害にもならない。むしろ中国共産党からすれば、平和的な割譲を考えても、そこに民間の地権者がいないほうがスムーズに事が進むと考えるはずだ。

6. 暴徒の存在を隠し、デモを取り締り、日本批判をアピールする

2010年の反日デモと同様の動きなのだが、反日デモは許可するものの、中国メディアは模倣防止で暴徒の存在を隠し、デモ隊以上の人数の警官隊を送り込んでデモを取り締り、日本を批判して中国人民の不満が中国共産党に向かないようにする*2

今回のデモが暴徒化したのは、警官隊が手薄だったからではないと思われる。わざと手薄にしたと言う主張はあるだろうが、中国共産党もデモ隊が暴徒化すればあたり構わず破壊行為を行い、体制批判を展開することは分かっている。2010年のデモがそうだったからだ*3。ピークを読み誤ったミスであろう。

9月18日がピークになると思われていた反日デモは、政府から個々の携帯電話にメッセージを送ると言う、強圧的な方法で防止された。2010年の例から言えば、微博のツイートも積極的に削除されているはずだ。反日を押さえられた中国人民は、中国共産党へ不満を向けうる。

そこで海洋監視船や漁業監視船を12隻も尖閣諸島に動員し、ほとんど茶番とも言える領海侵犯行動を繰り返している*4。あれは日本向けのメッセージでは無く、中国人民への中国共産党が仕事をしていると言うメッセージだ。人民日報が一面で海洋監視船や漁業監視船、二面以降に“平和的で模範的な反日デモ”を報じていることからも、日本に対する揺さぶりでは無い事が分かる。中国人民を煽った石原都知事に対しての、中国共産党の幹部の恨み節が聞こえて来そうだ。

*11000億バーレルと言われた周辺の原油埋蔵量は、現在では32.6億バーレルか、それ以下だと思われており、これは中国の原油消費量の約1年分に過ぎない(尖閣諸島周辺海域の石油埋蔵量について)。

*2東京大学の高原明生氏は「政府はやろうと思えばデモを抑え込めるが、ガス抜きや日本への意思表示の必要も感じている」と述べている(日本経済新聞)。

*3筑波大名誉教授の遠藤誉氏が、2010年の反日デモの経過について、詳細な分析を行っている(日経ビジネスオンライン)。

*4読売新聞によると、海上保安庁幹部は「船の数から見れば、活動がエスカレートしているように見えるのだが、これでは中国側の真の意図が読めない」と首をかしげているそうだが、国内向けアピールとすると理論整然と振舞っている。

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