自民と維新が来年の通常国会で「国旗損壊罪」法案を提出すると合意しており、その理由のひとつが外国国章損壊罪となっている。少数与党とは言え愛国右派の野党議員も多いので、成立する可能性はそこそこある。
外国国章損壊罪は、①公的機関が公的に掲げた国旗を、②侮辱する目的で③損壊、除去、汚損し、④外国政府から請求があった場合に罪に問われる法律だ。デモ隊が道路で外国の国旗を燃やしたところで適用されない。
日本国憲法第21条で表現の自由が保障されている以上、「国旗損壊罪」の適用範囲は外国国章損壊罪と同様になると予想される。米国では国旗損壊の罪は細かく規程されているが、損壊を罪に問うのは憲法違反だと言う判例がある。デモ中の在日外国人のグループが官邸前で日本国旗を燃やしても、「国旗損壊罪」が適用される可能性は無い。「国旗損壊罪」は、右派の皆さんが望むような法律にはならない。
そもそも外国国章損壊罪は、刑罰という点では意味がない。民間企業が掲げる国旗を奪取して破壊しても、適用されない(器物損壊罪にはなる)。官邸の記者会見で掲げられている国旗に歩み寄って燃やせば、適用されるであろう。しかし、より罪が重い器物損壊、放火未遂、威力業務妨害の罪にも問われる。布やシールで外国国章が見えなくなるように邪魔しても、器物損壊や威力業務妨害と見做される。外国国章損壊罪も適用されたとしても、罪が重くなるわけではない。
明治政府は何を考えて外国国章損壊罪をつくったのか? — 想像するに、外国政府から苦情が来た時に、「ご要望に応えて罰を与えました。」と頭を下げるための外交的道具ではないであろうか。実際の量刑が変わらなくても、外国国章損壊罪でも有罪にしたと言えば特別な配慮をした雰囲気が出てくる。1907年、刑法の成立時からある刑罰だ。列強国に対して弱腰であった日本を象徴している法律とも言える。
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