終わりが見えないまま、ジリジリとロシアの支配地域が広がってきたウクライナへのロシアの全面侵攻ではあるが、ロシアの継戦能力に底が見えてきた。
2022年後半から目立っていたロシア軍の兵力不足は概ね解消されているが、ロシア経済の労働力不足が深刻化してきた*1。死傷者数が70万人を超えているが、これに軍の増員の分だけ労働力人口が減っているし、労働者が軍需産業に50万人ほど移動した。生産能力の減少はインフレーションを引き起こす。民間部門の経済活動を抑制するべく政策金利は20%となっているが、それでも物価指数は8%の上昇だ。
民間を犠牲に軍需産業が満足いくだけ稼動できているかと言うと、そうでもない。兵器の損耗は生産を上回るペースで、衛星写真からはソ連時代に蓄えた大量の戦車や兵員輸送車が尽きてきたことが示唆されている。北朝鮮から武器を輸入し*2、さらには兵力を借りることになった*3ので予想の範囲内ではあるが、それでも驚きはある。
国家の存亡をかけた総力戦であれば、ロシアはまだまだ頑張れるとは思うが、ウクライナ侵攻はそういう戦いではない。ゼレンスキー大統領の主張が正しければ、ウクライナの戦死者は4万3000名に過ぎない*4。死傷者数は17万人から20万人と言ったところになると思うが、ロシア軍70万人超と比較して抑制されている。欧米からの武器と弾薬の供給が途切れなければ、ロシア軍を撤退に追い込める日も見えてきた。トランプ政権になってしまうので、欧米からの支援が続くか心許ないわけだが。
なお、中国がロシアに武器輸出を開始すると、また話が変わってくる。
*1ロシア、学生を勤労動員 侵略長期化で人手不足 鉄道工事・農業に従事案 - 日本経済新聞
*2北朝鮮の武器備蓄、最大3カ月 ロシアにコンテナ2万個―韓国分析:時事ドットコム
*3ウクライナ、北朝鮮兵と衝突したと発表 ロシア・クルスク地方で - BBCニュース
*4ウクライナ4万3000人戦死 ゼレンスキー氏が主張 - 日本経済新聞
この数字に関しては、所謂大本営発表であることに注意する必要がある。戦死者が倍でも、ロシア軍を撤退に追い込める可能性は高いが。
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