新設の機械化旅団の突破力がイマイチで、ウクライナの反転攻勢が失敗しそうだと思っていたのだが、盤面に変化が出てきた。ウクライナ軍が南部ザポリージャ州ロボティネ周辺でロシア軍の第1防衛線を突破し、ロシア軍は第2防衛線まで後退しつつ、東北部に配置していた精鋭部隊を南部に移動させた。
地雷原で足し止めして榴弾砲や自爆ドローンや攻撃ヘリで攻撃してくるロシア軍の防衛陣地を突破する方法があることを、ウクライナ軍は実証した。地雷と地表の朝夕の温度変化の違いから、サーモグラフィーで地雷の位置を洗い出しておき*1、ロシア軍のドローンの索敵能力が落ちる暁や黄昏の薄明の下で地雷を駆除して前進するような地道な作業を、ロシア軍の榴弾砲の射程内で行っていたらしいが*2、とにかく突破。
何重にもひいてある防衛線の一本が突破されたこと自体はロシア軍の計画通りとも言えるのだが、突破のされ方が悪い。ロボティネの戦いはウクライナ軍が4万~4万8000名、ロシア軍が8万~11万7000名が参加するこの戦争最大規模の戦闘になったとされる。東部に重点的に配置したために、南部の兵力が不足して突破されたわけではないことを示している。また、南部に増援となった第76親衛空中強襲師団は機械化師団であり、兵力のみならず、火力が不足しだしている可能性を示している。
ウクライナ軍がロシア軍の防御陣地を攻略したのか、ロシア軍がウクライナ軍を十分削って戦術的後退を行ったのかで今後の話が変わってくるが、おそらく前者。ロシア軍としては東部の兵力を回すことで対抗する手段が残されてはいるのだが、するとモスクワからの補給線の防衛が薄くなってしまう。予備役を総動員して兵力不足を埋める手もあるが、大統領選が終わるまでは政治的に躊躇われる選択のはずだ。
*1ウクライナ軍、地雷原突破で熱探知カメラを駆使 ドローン搭載も - CNN.co.jp
*2ロシア軍の対砲兵レーダーを地道に潰してきたのが活きて、榴弾砲による火力支援が集中的に行えるようになり、西側から新たに供与された長距離巡航ミサイルによるロシア軍の兵站への攻撃により、ロシア軍の榴弾砲の稼働率が低下し、こっそり前線に移動させた防空システムで攻撃ヘリを封じたことが予想されるが、まだこれらを裏付ける話は見ていない。
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