2022年2月27日日曜日

ロシアのウクライナへの武力行使は無いと言っていた人々へ

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自信たっぷりに語っていたことを、一生、反省して頂きたい。

気づくとアメリカのバイデン大統領が昨年末に警告した通り、ロシアがウクライナに全面侵攻する事態となっている。全面侵攻は意外かも知れないが、武力行使は意外ではない。既にロシアはウクライナへの軍事行動を実施してきているからだ。

2014年2月21日に仮調印済みのEU協定への署名を拒否した親ロシア派ヤヌコーヴィチ大統領がウクライナ–ロシア間協定に反対するデモ隊の圧力に屈してキエフから東部ハリコフに脱出して議会により失職*1、23日からクリミア半島で親ロシア派武装勢力が活動を活発化、25日にはクリミア議会を占拠、3月17日には「住民投票」の結果を受けて独立を宣言、3月18日にロシアにクリミア半島を併合した。

ほぼ同時にウクライナ東部のドンパス地方で親露派ロシア系住民が活動を活発化させ、2014年4月からドンパス地方は内戦状態に陥っており、2014年9月に結ばれたミンスク議定書、2015年2月のミンスク2は機能せず、2018年11月にロシアがウクライナ艦艇を拿捕する事件も起きている。2014年7月のマレーシア航空17便撃墜事件で用いられた9K37ブーク防空システムで明らかなように、ウクライナ領内の親ロシア派はロシア軍と装備を共有しており、実際のところロシア正規軍であると考えられている。

ウクライナへの軍事侵攻は、ウクライナのロシア離れを起因として、8年前に始まっていた。ヤヌコーヴィチ大統領後のウクライナは、脱露入欧路線に回帰する。トゥルチノフ大統領代行は2月23日に公用語からロシア語を排除し、2014年5月にはEU協定を署名した。2015年2月12日のウクライナ・ロシア・フランス・ドイツの4ヶ国首脳会議中に(2014年6月7日に就任した)ポロシェンコ前大統領の面前で、ロシアのプーチン大統領が鉛筆をボキっと折った話があったが、かなり険悪な関係が続いていた。ウクライナは継続的に貿易に占めるロシアの割合を落としつつ欧州連合(EU)の割合を増やしており、兵力なども増強して来ている。

ロシアの対ウクライナ政策は継続的なものであり、ウクライナの対ロシア政策も継続的なものであり、軍事紛争が拡大する可能性は常にあった。国富や国民厚生といった損得勘定で言えばロシアに利は無いが、プーチン大統領は今までそれらを最優先にしてきたわけでは無い。クリミア半島併合後にかけられた経済制裁を解除するために、外交的妥協を模索しなかった*2。10万を超える兵力をウクライナとの国境地帯に集結させていた段階で、ロシアが軍事行動を拡大する可能性は排除できなかった。まさかとは思うし、驚きはあるのだが、武力行使は無いと断言していた人々は、情報をうがった目で見すぎであった。

*1超法規的な手段で大統領が地位を追われたと言う話をする人々が多く、ヤヌコーヴィチ大統領もそのように主張しているが、ウクライナ憲法111条の規定に基づき、ウクライナ議会によって罷免されている。

*22014年からの経済成長率は低迷している(ロシアの経済成長率の推移 - 世界経済のネタ帳)。

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