気づくと2015年5月の自殺者数の統計が出ていて、前年比1.8%減の2217人だった。1月から5ヶ月連続で昨年比で減少している*1。自営業者の消費税納付時期になる翌年3月と5月に自殺者数が急増すると強く主張していた人もいたのだが*2、3月も1.5%減であり、その傾向も見られない。2014年全体は6.8%減となっており、消費税率引き上げ後に自殺が増えた形跡はない。自殺増加を強く主張していた人は、今、何を思っているのであろうか?
1997年の消費税率引き上げと、1998年の自殺率増加を結びつけたくなるのは理解できる。しかしデータを細かく確認し、アジア通貨危機や不良債権問題を考慮に入れると、この因果関係が怪しい事はすぐ分かる*3。消費税納付時期自殺急増論も、以前から消費税は滞納が多い(=支払いを遅らせることができる)ことや*4、自営業者の絶対数が少ないことまで考えれば*5、説得力は無い。
消費税率引き上げに反対するために自殺率と言う数字を見つけてきて、この二つが結びつくようにデタラメを並べ続けて来たわけだ。さすがに2015年3月の数字を見た段階で弁解をはじめたようだが*7、何の根拠も無く国税庁の態度が変わったと主張しているし、他の要因が自殺率を抑制したともしている。これで、消費税率ではなく他の要因が自殺率を決定していると思わないのであろうか?
反実仮想の議論なので、消費税率を維持していたらもっと自殺者数が減ったと言い張ることは可能であるが、それと整合的な数字は私が知る限り存在しない。さて消費税率を引き上げで自殺率が増えると予言していた人は、消費税率を引き上げると税収が減るとも予言していたのだが*6、消費税のみならず、増税後の2014年度は所得税や法人税も増えている*8。こちらの方にも、何か弁解は無いのであろうか?
*1以下の「警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等」(平成27年6月12日 内閣府自殺対策推進室)のグラフを参照。
*3関連記事:1997年の消費税率引き上げが自殺者数を増やした?
*4「平成25年度租税滞納状況について」の以下のグラフを参照。
*5「図録▽職業別自殺者数」を見ると、自殺者に占める自営業者の割合は、自殺者数の増減幅と比較しても低い。
*6「3月の自殺者数速報がでました - シェイブテイル日記」
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