「2013年度税収弾性値試算 3.61 = 6.87÷1.9」と言う数字が流れていて、財務省が仮定している1.1よりもデフレ期の税収弾性値は大幅に大きいと思っている人々がいるようだ。不況から好況になるときに税収弾性値が大きくなるのは不思議はないが、3を超える数字には違和感が残る。単年度の変化から弾性値を出すから、誤差が大きいのでは無いであろうか。過去7年間の数字から、税収弾性値がどの程度かを計算してみよう。
1. 分析手法
税収弾性値は、税収の変化率/名目GDPの変化率と定義される。ミクロ経済学の教科書の巻末的な式の展開*1をすると、対数化した線形回帰の係数がそれだと見なすことができる。分析に使う期間は2007年度から2013年度にする。2006年度までは税制の改訂が頻繁に行われており、その影響の切り分けが困難だからだ。
2. データセット
税収額は「日本の財政関係資料」を参照し、手抜きだけれども名目GDPは「日本のGDPの推移 - 世界経済のネタ帳」を見てしまおう。復興特別税の影響が気になるのだが、復興庁の資料を見ると「税収」は「一般会計より受入」と別項目になっているので関係ないと見なす。なお2013年度は、報道されている税収47兆円を入れる(朝日新聞)。
3. ソースコード
計算間違いが良く問題になるので、大したものではないけれども、ソースコードを公開しておこう。
df <- data.frame(
YEAR = seq(2007, 2013),
GDP = c(512975.20, 501209.30, 471138.60, 482384.40, 471310.80, 473777.10, 478368.20),
TR = c(51.0, 44.3, 38.7, 41.5, 42.8, 43.9, 47) )
r <- lm(log(TR) ~ log(GDP),data=df)
interval <- function(beta,se,range,nof){
a <- 1 - range/2
sprintf("%.3f(95%%信頼区間%.3f~%.3f)",beta,beta-se*qt(a, nof),beta+se*qt(a, nof))
}
summary(r)
interval(r$coefficients[2], coef(summary(r))[, 2][2], 0.05, summary(r)$df[2])
4. 推定結果
以上の手順による税収弾性値の計算結果は1.881(95%信頼区間-0.276~4.039)。決定係数は0.5012だからそこそこの当てはまりだが、係数自体の分散は大きく信頼性はイマイチだ。それでも、もっともらしく主張できるのは1.9ぐらいと言った所であろう。デフレ期の税収弾性値が3と言うのは、誇張されている数字に思える。
5. 解釈を行う前に
1.9でも十分高いのではあるが、法人税が景気の影響を受けやすい*2ので、リーマンショックとその後の景気回復期が分析期間であるのが理由だと思われる。このまま景気が拡大していったら、税収弾性値は落ちていくことであろう。1.9のままずっと推移したら、あっと言う間に税収がGDPを超える。こういう事を考え出すと、長期の税収弾性値はもっと低めに見ないといけないわけで、財務省の1.1がそうおかしい数字と言うわけでもない。
*1対数微分と弾力性で検索すると、細かい議論が見つかると思う。
*2「主要税目の税収(一般会計分)の推移」を見ると、H19からH21への急激な落ち込みが目に付く。
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