2022年5月15日日曜日

多くの経験者から見て、AV女優と言う仕事はそう良いものではないよ

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成人年齢の引き下げによって、18歳と19歳のポルノ出演契約に未成年者取消権が適用されなくなることが問題視され、与野党が協調してAV出演強要防止法を急いで取りまとめているのだが、ポルノや性風俗に関連して被害を受けた女性の支援を行っているNPO法人ぱっぷすが法案に難癖をつけている。

1. 公言されるポルノ撮影禁止論

法案自体はかなりポルノ製作事業者に厳しいものなのだが*1、「「性行為などを撮影した映像」という趣旨の文言」が「性交など性行為の撮影を肯定する」のが問題、「今、AVは脱法的な存在…売春防止法に抵触」と主張しており*2、同法人の中里里博副理事長の声明では、金銭で性行為をさせて撮影し映像を販売するのは、出演者の自由な意思決定に関わらず、出演者の尊厳を毀損すると主張されている。つまり、ポルノ撮影禁止を求めている*3

2. ポルノ撮影禁止は現実的ではない

ポルノ撮影禁止は現実的ではないし、ポルノ出演可能な女性の厚生を悪化させる可能性があるので、賛成し難い主張だ。今までの法運用ではポルノ撮影は適法と考えられてきたので、そもそも違法と言う解釈は取るのは法の安定性に問題が出る。違法とすることはできるが、少なくとも現時点ではポルノ撮影に関して違法とすべきとする声は小さく、時間がかかる。ポルノ製作を規制したら、国外で契約・撮影するなどの規制回避が行われ、結果的によりAV女優の保護が困難になる可能性もある。規制回避が行われなくても、女優を含めてポルノ製作者が収益機会を失うし、消費者も愉しみが失われる。

3. 多くの経験者にとってそう良い仕事ではなかった

ただし、NPO法人ぱっぷすの主張が出てきた背景は考慮に値する。毎年多くがデビューする中で*4、名前(芸名)が売れて稼げるAV女優は少数であり、実際は企画モノに出演するケースが8割とされ、まとまったお金(or もしかしたら小銭)が欲しくてやっている事が多いと予想される。AV女優になる経緯も、食事などを重ねて懇意になったスカウトに勧誘される*5など、強要が無くても、社会的スティグマ*6を計算に入れた上で合理的に損得勘定をしてAV女優になったのか疑われるケースがある。有名元AV女優が違法薬物で逮捕されたり、変死したりする事例もよく報道されているし*7、名前が売れていたAV女優が後悔を表明していた事例もある*8。出演作品の動画配信を停止させるAV女優も多い。

「「AV女優」という仕事を誇りをもって選んだ人々に対して、「お前たちは自分の仕事を選ぶ能力もない愚か者だ」と言っている」と批判している表現の自由戦士もいるのだが、多くのケースでは「「AV女優」という仕事を誇りをもって選んだ」とは考えづらいし、少なくないケースで「自分の仕事を選ぶ能力もない愚か者」であったことが発覚している。人気タレントになった成功者も少数ではあるがいるし、無名でも出演料で経済厚生を改善した人々も多いであろうが*9、そうでない人々もかなりいる。NPO法人ぱっぷすのような組織に集まってくる少なくない失敗選択の事例の存在を無視してAV女優と言う職業を美化し、ポルノ撮影を擁護しようと言うのは、誇大広告論法と言う詭弁だ。

4. 保守的フェミニズムもフェミニズム

フェミニズムはパターナリズムからの女性の開放を求めるものだから、NPO法人ぱっぷすの議論はおかしいと言い出す表現の自由戦士が出てきそうだが、男性社会のためのパターナリズムではなくて、女性の厚生のためのパターナリズムと考えたら、話の一貫性は保てる。フェミニズムは女性の権利拡大・地位向上運動の総称なので、色々な主張が並存できることには注意しておこう。

*1新成人AV出演強要防止へ 与野党、月内の法案提出方針を確認 | 毎日新聞

*2AV対策新法に「待った」 性行為の撮影、合法化しないで:朝日新聞デジタル

*3文脈から挿入を伴う性行為の撮影禁止とは解釈できない。

*4【驚愕】AV女優の人口・人数って一体どれくらいいるの?│AV女優デビューナビ

*5「それが“口八丁手八丁”と言われるのかもしれないが、信頼関係ができてからAVの仕事があると説明している」「知り合いにばれるのではという不安には、“誰かに聞かれても私じゃないと言いきればよい、自分が言わない限り絶対ばれない”と(言う)」「勧誘する時に悪いことはできるだけ言わない人が多い」と言う元スカウトの証言がある(18歳成人で“AV出演強要”のおそれ?なぜいま議論に|18歳 成人年齢|NHK

【AV強要】現役女優・香西咲が語る「洗脳」から出演までの8カ月 | ハフポスト NEWS

AV強要、元タレントも被害 ミスコン受賞歴、歌手の夢捨てられず…

2014年にAV出演を拒絶した(もともとは18歳のときにタレントとしてスカウトされた)女性が、所属プロダクションから2400万円以上の違約金を請求された事件(所属プロダクション敗訴確定)もある(私が東京高裁に提出した陳述書(1)ーはじまり)。

2016年2月の事件でも、当時19歳だった女性は、社長らに「「仕事と割り切ってやれ」「断ったら撮影代など莫大(ばくだい)な金を払ってもらうことになるけど大丈夫かな」などと」言われたと証言している(AV強要「適正プロダクション」までも…いまだ「改善」期待できず)。

*62015年、19歳の時に現役女子大生としてAVデビューした桃園怜奈氏は、大学ですぐにAV女優だと知られ、好奇の目にさらされるだけではなくセクハラ被害にあい、勤務先でも同様であったようだ(名門大在学中にデビューしたセクシー女優、SNSで個人特定され「発売1ヵ月後に大学全員が知っていた」:...|テレ東プラス)。

AV出演の過去が発覚しゴールドマン・サックスが内定取り消し!解雇、イジメ、離婚…元AV女優差別のヒドい実態|LITERA/リテラ

*7社会に上手く馴染めないのでAV女優になっただけで、AV女優になったから社会に上手く馴染めなくなったとは言えない可能性はある。

*8月4日で100万円稼いだ元AV女優。「AVに出たことを後悔していますか?」 | SILLY

—AVに出たことを後悔していますか?

「そうだね。ネットで調べたら自分の作品は出てくるし、一生残ることは後悔してるかな。もう仕方ないことだと割り切っているけど、結婚して子供ができたときに、『自分の娘とか息子にバレたらどうしよう』って単純に思うんだよね。引退した後でも周囲の視線が気になったり、人間不信からうつ病を患ってしまったりという後遺症もあるしね。お金の分くらいリスクのある選択をしたなと思うよ」

*9例えば性風俗業従事者で、既に社会的スティグマを負っている場合などは、失うものが小さい。AV女優の中には、性風俗が前歴の人も多いようだ。

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