2021年2月19日金曜日

『アメリカの政党政治 — 建国から250年の軌跡』で、アメリカの分断を理解しよう

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ここ数年、よく取り上げあられるが意味が分からないものに、「アメリカの分断」がある。昔から貧富の格差が大きくゲーテッドコミュニティがあるような国で、いまさら人々の間の分断が問題になるのが不思議だったのだが、アメリカで今、進んでいる分断の意味が分かる本が出ていた。アメリカ政治史が専門の岡山裕氏の『アメリカの政党政治 — 建国から250年の軌跡』は、建国から現代までの政党政治の概要が分かる本だが、それだけに現在が過去とどう違うか分かりやすいものとなっている。

歴史的には二大政党はどちらの側にもそれぞれ様々な考え方の人々が集まっており、党の支配力の弱さもあって政治家は所属政党に縛られずに政策の支持・不支持を決めることができた。予備選があるために、党の指導部の意向に関係なく立候補ができ、予備選の体制で党の支援なしに本選に望める政治家たちなので、党議拘束などで縛る事もできない。過去の二大政党にイデオロギーの差異がまったく無かったと言うわけではないが、教条的にイデオロギーを守っていると言うことはなく、州権論を標榜していた民主共和党が連邦政府の権限を強化したり、自由主義経済を標榜していた共和党が大恐慌で(ニューディール政策以前に)拡張的財政政策をとったり、さらには主義主張や主な支持基盤がが二大政党間で入れ替わったりてきた。

ところが公民権運動の後のソーシャル・リベラリズム全盛期の後、保守系シンクタンク(e.g. ヘリテージ財団)をつくるなどして保守派が思想的に盛り返し、政治資金をくれるスポンサーの影響力が増して政治家がイデオロギー色を強くしていき、二大政党の差異が大きくなっていく。それでもブッシュ政権までは共和党にもリベラル色が垣間見れたりしたが、クリントン政権時には、ギングリッチ下院議員が「アメリカとの契約」という公約集への賛同者を集めるなど、共和党内が(反リベラルと言う意味で)保守化し、対決姿勢が明確化され、スキャンダル政治も多くなる。最近、何かと言及される「分断」だが、何十年とかけて二大政党間のイデオロギーの違いが明確になったと言うのが実際で、トランプ政権によって突然生み出されたわけでも広がったわけでもない。

政党が特定イデオロギーにコミットすることが問題になるのが不思議だが、アメリカの二大政党は、制度的に第三の党の勢力拡大を抑制しており、少数党でも連邦上院での議事妨害フィリバスターが可能で、かつ、党の指導部が政治的妥協を行って議員を従わせることもできず、連邦議会が機能不全に陥りやすい。外交問題は二大政党の間の意見の差異は大きくなく、州議会は多数派の権力が強いので、連邦レベルの内政におけるものに限られるが、決められない政治となってしまった。フィリバスターを無効にするための議事打ち切りに必要な議員数を減らしたり、上院承認人事でフィリバスターが出来なくしたりと徐々に多数派により強い権力を与えるようになっているが、連邦議会を通した法案による政策実現は困難になってきており、オバマ政権やトランプ政権は大統領令を多発することとなった。

『アメリカの政党政治』は19世紀のアメリカに、通貨発行量を増やしてインフレを起こし、農村の借金を実質ベースで減らす事を主張していたグリーンバック党なるものがあった(p.109)ことが書いてあったり、政治学徒の常識をキャッチアップするのに良い。『憲法で読むアメリカ史』と並んでお勧めしたい。

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