2019年4月24日水曜日

ある社会学者の産婦人科医への罵倒に関して

このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote
Pocket

社会学者の橋迫瑞穂氏(@_keroko)が、妊娠初期では母親の仕事や運動などが原因で流産することはほとんどなく、妊娠10週未満の流産を防ぐ有効な対策はないので、出血などで病院にいってもその後の経過は変わらないと説明している産婦人科医氏(@syutoken_sanka)を、データの問題と個別の事例は別であり非論理的だと罵っていた*1。医学的にも統計解析の意味でも橋迫氏の方が…な主張に思える。

産婦人科医氏の主張は、氏の職務からして当然なのだが、常識的なものだ。国立成育医療研究センターの「出産に際して知っておきたいこと」を見ても、

妊娠12週未満の「早期流産」の場合、主な原因は赤ちゃん側にある自然淘汰で、お母さんの生活が原因で起こるということはありません。薬などの治療法もなく、流産が確定した場合には流産手術(子宮内容除去手術)を考慮します。

と、何も手が無いことが書いてある。他も検索してみたのだが、強いコンセンサスがあるようだ。腹痛がひどかったり出血が多い場合は母体の安全が問題になるので救急車でも呼んだ方がよいと思うが*2、産婦人科医氏は「妊娠10週未満の流産には特に有効な対策はない」と言っている。その後にぶらさがったやり取りも妊娠の継続についてである。

根拠に基づく医療(EBM)のデータは代表的な患者への効果量だけを見ているわけではない。例外的な体質や状態のときのサブサンプルも見ているし、そもそも平均効果を見ているだけでも例外的な効果も検知できる。つまり、ある治療が100人に1人に効果があるときでも、統計解析でそれは検出できる。99人に処置効果がゼロで1人の処置効果がプラスなのであれば、100人の真の平均処置効果(ATE)はプラスになる。あとはATEの大きさとサンプルサイズの兼ね合いになるが、膨大な観測数があれば統計的有意性は出てくる。妊娠初期の出血のようなよくある事例の場合は膨大な観測数がある。

医療も日進月歩なので将来は分からないが、今は妊娠初期の流産を防ぐ術は無いと言う話を疑うべきようには思えない。少なくとも具体的な治療法を示した何かの医学論文でも持ってこないと、まともな議論にはならない。ところで橋迫氏の「例えば物理的に事故って流産の可能性がでてきても、本人が自覚できてなくて救急にかかるケースがでてきたら責任とれます?」は文意が理解できなかった。物理的な事故による流産の場合でも打つ手なしと言う話であろうし、事故で救急にかかる場合は妊娠しているか問診票に書くのでは無いであろうか*3

妊娠初期の流産に関して自分の振る舞いが悪かったかのように悩む女性も少なくないらしく、妊娠初期の流産に関して何か対策があるかのような橋迫瑞穂氏の主張は、そのような女性の悩みを深める可能性がある。ジェンダーの問題を扱っており、子宮系云々と言う議論を展開している人がする話としては、ちょっと粗雑過ぎに思える。

*1橋迫瑞穂氏のツイートだけでは話が分からないと思うので、以下を参照されたし(クリックで拡大)。

*2自己判断は危険と言うことで、妊娠時期を限定せずに受診もしくは電話相談を勧める産婦人科医もいる(妊娠時の出血とおりものの変化について産婦人科医200人に聞いてみました | イシコメ)。

*3検索すると「Q. 現在妊娠中、またはその可能性がありますか?」と言う項目がある。

0 コメント:

コメントを投稿