2018年7月2日月曜日

「日本の秘められた恥」の解消のために、性行為の前に積極的同意の記録が必要としよう

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昼の情報番組などで広く取り上げられて来たらしいジャーナリストの山口敬之氏が伊藤詩織氏に性的暴行を加えた疑惑について、BBCがドキュメンタリー番組を放送するなど*1、積極的に報じている。

デートレイプの問題は英国や米国にもあるし、個別事件が立件されないのは様々な理由があり得るので、検察の判断が間違っているとも言えないのだが、BBCを偏った報道と簡単に片付けない方がよいかも知れない。この事件自体は性犯罪をどう規定するかを考える機会にはなっているからだ。

1. 検察の不起訴は間違っているとは言えない

二人で飲酒後、山口氏が酩酊した伊藤氏をホテルに連れて行き、意識の無い伊藤氏に性的行為を行なった、伊藤氏は行為中に意識を取り戻したと言うのが、伊藤氏の説明する事件の概要だ。山口氏は介抱して意識が回復後、伊藤氏と合意の上で関係を持ったと主張している。なお、酩酊などで合意を取り付けるのが困難な相手に性交をすると準強制性交等で罰せられる事になっている*2。伊藤氏の主張によれば事件性は高いのだが、検察も検察審査会も不起訴とした。

検察も検察審査会も不起訴理由を明らかにしていないが、密室での行為で物証に乏しいのが主な理由だと考えられる。強姦か否かを決定する重要な要素は両者の合意ではあるが、これに関して物証が残る事は少ない。強姦事件の判例紹介を見ていると、事件の状況から合意があったと見なせるか、見なせないかを判断している。判例からすると、以前から面識もあったようだし、合意が無かったとは見なせないと言う事なのであろう。陰謀論も出ているが、検察判断を非難すべきと言えない。

2. 違法ではなくてもアンフェアな行為

だが、気味の悪さも残る。山口氏の説明する状況ですら、違法とは言えないがアンフェアな面が多々ある。伊藤氏の説明する状況であった可能性も排除できない。伊藤詩織氏を擁護する人々は、これらに違和感を感じているはずだ。

極度に酩酊した人間が正常な判断を取り戻すまで、どれぐらいの時間が必要であろうか。若い頃に無茶をした人々は、朝まで飲んで下り列車で家に帰ろうとして、昼過ぎに上り列車に乗っていたこともあるだろうが、その瞬間の判断能力に自信が持てるであろうか。強く吐き気があり、頭痛が伴う状況だ。しかも、知らない密室に気づかないうちに誘導されている。マルチ商法の防止目的で、密室での勧誘行為は規制されているが、これも判断能力を落としているはずだ。

意識不明とは言えなくても、伊藤氏の抵抗能力と判断能力を奪ってから関係を迫っており、さらに本当に意識が無かったのか判別することができない。なお、この事件は特異と言うわけではなく、世にあるナンパ術の少なくないものが該当する。

3. 積極的同意を必要とする考え方

現行法の違法行為があったと認定することはできないとしても、日本と言う社会がそのままで良いというわけではない。山口氏が行なったような行為は、違法にしてしまった方がデートレイプの防止のためには良い。

性犯罪には狂言がつき物*3なので、何でもやたら厳しくするわけにはいかないが、少なくとも米国では性的なトラブルが生じた場合、訴えを受けた側が「イエス」があったことを証明できなければ非難や制裁を加えるべきだと言う考え方が広まりつつある*4。限定的な範囲では、州法にされているところもある*5

夫婦間の日常的な性行為もありえるし、社会的にその関係が自然に思える場合は、必ずしも必要ではないであろうが、面識がある程度の人間関係から性交渉を行なう場合には、積極的同意をとる方がデートレイプの防止になる。技術的にも難しい事はなく、スマホで二人が性行為に合意する意志表示を行なう動画を撮っておけば良い*6

社会規範から yes と見なされる関係・状況を明確化・明文化して、yes と見なされない場合には積極的同意をとってそれを記録する義務があると言う風に、法制度を調整すべきだ。勢いや成り行きで関係を持つことが困難になるので、恋人がいない率がさらに高まりそうではあるし、SNSで性行為を前提としたデートの誘いをしてアカウント凍結される人間が多発しそうではあるが。まぁ、非モテには棒高跳びで6m14ぐらいの難易度になっても結果は同じなので困らない。

4. 立法府に規範の変更をさせる努力が要る

日本の法律はこと細かく違法事項を書き込まない傾向があるし、裁判官に法解釈の範囲を与える傾向が強いのだが、往々にして従来追認の保守的な判断が下される事になる。世の中を変えたければ、やはり立法段階から盛り込むほうが望ましいし、男性側から見ても何がいけないのかはっきりするので、身の振舞い方を考えやすくなる。伊藤詩織氏の事件で何かの怒りを覚える人は、やはり国会議員に働きかけていくべきであろう。

声をあわせて「今から同意に基づき交尾しま~す」と仲良くセルフ動画撮影をするバカっぷるばかりの未来を目指そう(;´Д`)ハァハァ

*1「日本の秘められた恥」  伊藤詩織氏のドキュメンタリーをBBCが放送 - BBCニュース

*2実際に逮捕・起訴される事例も出ている(25歳モデルを部屋に連れ込み……逮捕された“リアルナンパアカデミー”生徒のあきれた手口 | 文春オンライン

*3痴漢冤罪が問題になっているが、性的暴行事件でも狂言と思われる事件が稀に報道されている。

Man cleared of rape after court shown phone footage of woman 'actively' taking part in sex | Daily Mail Online

弁護士も騙された強姦告訴事件 - 弁護士河原崎法律事務所

*4「ノーはノー」から「イエスがイエス」へ : なぜ性的同意の哲学的分析が必要か』(pp.76--83)の議論を参照。

*5スウェーデンでは法改正され7月1日から「明白な合意のない性行為はレイプ」になった(AFP)。ただし、「性行為の際に言葉や身ぶり、その他の行為によって合意の表現が成されたか否か」を判断する事になっており、なお事実認定は難しいであろう。

*6既に専用アプリも開発されている(Good2Go、セックスの同意を求めるアプリ | 北米メディア / コンテンツ 産業情報レポート)。

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