2017年7月14日金曜日

連合の残業代ゼロ法修正案は固定残業代制度と比較すべし

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関係団体で話を聞いていないと混乱が広がっているようなのだが、日本版ホワイトカラー・エグゼンプション、高年収人材の残業手当てを無しにする「高度プロフェッショナル制度」だが、連合が条件付容認に転向したと報じられている。反対から突然の条件付賛成に移ってネット界隈でも困惑が生じているようなのだが、連合が労働者を裏切ったと言う前に、現在既にある残業代ゼロ制度と連合案を比較してみよう。労働条件の悪化はもたらさない事がわかるはずだ。

1. 既にある実質的な残業代ゼロ制度

今の日本では、年俸制と表現されている場合が多いと思うが、固定残業代(みなし残業時間)を大量につける残業代ゼロ制度が存在している。この固定残業代、固定残業代を超える残業をしても超過分の賃金を払わない違法運用をしなくても、36協定に縛られず上限を設定できるので青天井である。また、厚生労働省通達で残業時間の上限が設定されてはいるものの、繁忙期と言い訳する抜け道があるので、残業時間規制はかなり緩い。実際の運用では、ほぼ法規制に縛られていないと言ってよいであろう。固定残業代を含めているのに賃金が安すぎる求人が非難されるのを見るが、低賃金で実質的に残業手当て無しの雇用契約は、実際のところ存在する。

2. 連合の修正案ではデスマーチは無理

報道されている*1連合の「高度プロフェッショナル制度」修正案は、年104日以上の以上の休日取得を企業に義務づけるとともに、

  1. 労働時間の上限設定
  2. 勤務間インターバル制度
  3. 2週間連続の休日取得
  4. 心身の状況に応じて臨時の健康診断の実施

などから複数の対策の実施を求める事になっている。

必須になる「年104日以上の以上の休日取得」は、デスマーチを実質的に不可能にする。月100時間超の残業データを見たことがある人ならば分かると思うが、休日出勤で稼がれているのが実態だ。月200時間超になると法定休日すら消化していない違法状態になる。厳密に運用されれば、これだけでかなりの縛りだ。

オプションだが勤務間インターバル制度がある場合を考えよう。だいたい退社から出社まで8時間は置くことを義務付ける制度だ。深夜1時に近くのホテルに仮眠に行き、朝5時に戻ってくるような事は許されなくなる。勤務間インターバル制度があって労働時間を最大にしようとすれば、朝9時に出社して繁忙期でも終電までに帰ると言うのが最も現実的になる。

同じくオプションの労働時間の上限設定も、年に6回まで繁忙期は上限超えを許すような特別条項を置かなければ、厳しい縛りになる。今の厚生労働省の通達に準拠すれば、繁忙期の1週間で1日11時間労働(e.g. 9時-22時)、勤務261日として年平均で1日9時間40分程度しか働けない。定時に上がる日々がかなりを占めることになる。

これらでも不十分と思うかも知れないが、実態として横行している固定残業代を用いた年俸制なるものと、連合の「高度プロフェッショナル制度」修正案を比較したときに、どちらがマシかは一目瞭然であろう。今は固定残業代ではない雇用契約の人が「高度プロフェッショナル制度」修正案に移行する場合でも、労働時間管理は厳しくなる。

3. 雇用主に不利なので普及するかは謎

雇用主に有利になる雇用制度とは言えないので普及するのか謎ではあるが、これによって過労死に追い込まれる人々は、固定残業代を使った年俸制で追い込まれていると思うので、状況が悪化する事は無い。そもそも、年収1075万円以上の高度プロフェッショナル人材と言う縛りがあるわけで、大企業の(名ばかりではない)管理職か、景気の良い一部のテクノロジー企業以外には関係の無い話でもある。

これを逆に考えれば、安月給が固定残業代を使ったブラックな年俸制、高給取りが高度プロフェッショナル制度を使ったホワイトな年俸制になる近未来が見えると言う事でもあるが。

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