2017年4月5日水曜日

21世紀の黒い経営学

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日本人から見ると米国企業の労働生産性や収益率は驚異的なのだが、中身はそんなに良くないかも知れない。どうも古いスタイルの経営学で強調されるような話によって、経営効率が増していると言うわけではないようだ。

The Economist誌によると(昔風の)経営理論が主張するところと異なり、ビジネスの変化の速度は遅くなり、反グローバリズムの風が吹いている一方で、寡占化で非競争的になり、企業家精神は廃れている*1。現在の歴史的な高収益は、合併や法律に習熟することで独占力を増し*2、年金基金の主導で非競争的な環境を作り出し、ロビー活動で有利な規制を作ることによってもたらされている。実際、海外比率が高い米国企業の国内外の収益率の差を見ると、米国内の方が4割以上高い*3

自由主義の信奉者的に言われることが多いThe Economist誌が規制強化を訴えているのが面白いのだが、正面から競争を行なっていっても中々利益を上げることはできない。経営学者は無視しがちな気がするが、上手いノウハウがあったとしても、競合他社もそれを取ることができるものだ。競合他社との競争を避けるレント・シーキングこそが、本当に収益を上げる経営戦略なのであろう。そして、競合他社がいない所を狙うのではなく、競合他社がいなくなるように振舞うのが、21世紀の経営学と言うことらしい。経営学の本に、こんなネガティブな事は書いていなかったが*4

*1Management theory is becoming a compendium of dead ideas | The Economist

*2合併で独占力が増すのは、産業組織論の教科書で取り上げられているが、法律に習熟しても独占力を持てないように思うかも知れない。しかし、色々とやりようがあるようだ。例えばPay-for-Delayと言って、先行する医薬品メーカーの特許が切れたあと、競合他社が参入を防止するために、先行会社が競合他社を訴えた後に、先行会社が競合他社に和解金を支払う事象がある。もっとも、規制当局はこれを今後も許す気は無いようだが。

*3Too much of a good thing | The Economist

*4関連記事:「世界の経営学者はいま何を考えているのか」でイマドキの経営学の雰囲気を掴む

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