2016年4月5日火曜日

保育園落ちた日本死ね!!!騒動で見落とされている事

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はてな匿名ダイアリーに「保育園落ちた日本死ね!!!」と言う秀逸なエントリーが出て、国会で取り上げられるまで話題になった。身近な問題なので、あちらこちらで意見が出て来ている。認可保育所が不足しているのだから増やすべきと言う素朴なものが多いようだ。供給不足の原因や、供給を増やす方法を考察しているものもあるが、今より政府負担を多くすべきと言う認識が大勢だ*1。しかし、保育所にどれぐらいの公費が投入されているのか知っている人も、保育所を提供しないといけない理由について整理できている人も少ないようで、危うい主張になっている。

まず把握しないといけないのは、保育所の運営費用である。月額換算でゼロ歳児で40万円超、一歳児と二歳児でも20万円超かかっている*2。認可保育所の保育料は平均2万円前後と費用よりも遥かに低いため、かなりの公費が投入されている。政府予算は無尽蔵ではない。増税に反対の人々は多いわけで、何かの理由で正当化する必要がある。しかし、それは意外に困難だ。

  1. 保護者が保育所に子どもを預けることを当然の権利と言い出す人々もいるが、そうしないと直ちに生活が困窮するわけでもないから自明では無い。片親世帯、低所得世帯、高齢介護者を抱える世帯は、認可保育所の利用が優先されている。これらの世帯が諸般の事情で認可外を利用するときは、別に補助金が出ることも多いようだ。比較的豊かな世帯の現在専業主婦の人々に、保育サービスを提供すべき理由が必要となっている。
  2. 就学前教育の効果を理由にする人々もいる。一見、それらしいのだが、かなり弱い理屈づけになる。現在の保育所は教育サービスではなく、厚生労働省所管の託児サービスと言う位置づけである。この論理で行くと、幼稚園の方を無償化しないといけない。また、大半の保護者は子どもの教育のためではなく、自身の就業のために保育所を利用しているのは明らかだ。
  3. 女性の就業を促進する効果を理由にする人々もいる。これも、保育所の就業促進効果の有無や効果量について議論があること、女性の自活力を維持することにより家庭内暴力や女性の貧困を抑制すると言う論理を、比較的豊かな世帯の現在専業主婦の人々の(職歴としての価値が低い)パートタイマーまで拡張するのに無理があることから、実は説得力が無い。
  4. 出産を促進すると言う主張もみかけるのだが、保育所の拡充が出生数を増やしているような統計は無さそうであるし、この目的であれば現金給付の方が理に適っているであろう。子どもが一人で働いている女性を支援しつつ、子どもが三人で専業主婦の女性を支援しない理由は無い。子育て中の専業主婦のいる世帯が払った税金も、保育所への公的支援に使われる事にも注意する必要がある。

母子家庭で母親の就業を促す貧困対策としての意義はあるのであろうし、認可保育所の入所優先順位のための点数も大体その目的のためにつけられている。しかし、共働きでそれなりの世帯所得がある家計の利用が進んできた現在、価格設定が不適切になってきた。実際のところ、保育所の供給不足問題の解決は容易で、それなりの所得がある家庭に課す保育料を引き上げればよい。もちろん、これだと問題があると思っている人々は多くいるのだが、彼らはなぜ問題があると言えるのか、よく整理できていないようだ。少なくとも大きな声で、規範的な理由を明らかにはしていない。

*1若年人口の増加が大きい都市部に問題が集中しているため、予算と言うよりも需要予測などの問題が生じているだけの可能性もある。

*2保育園の運営費用負担割合と園児一人にかかる費用と保護者負担額 | 板橋区』を参照したが、首都圏であれば大きなさ差は無いであろう。

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