2015年3月4日水曜日

日韓で共有していない基本的価値

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外務省ウェブサイトでは今まで韓国を「我が国と、自由と民主主義、市場経済等の基本的価値を共有する重要な隣国」と表現してきたのだが、3月2日になって「我が国にとって最も重要な隣国」と表現を変えたそうだ(J-cast)。韓国を専門とする政治学者の浅羽氏は前の文言が好きだった*1のでショックを隠せないようだがtogetter)、韓国の政府や司法が国民情緒に大きく振り回されている現実を認めたものに過ぎないし、日韓関係に夢を見なくなったのは評価できる。

1. 日韓で条約を含めた実定法の尊重の程度が異なる

日本政府が日韓で共有していないと見なす基本的価値は何であろうか。浅羽氏は自由と言っているが、実定法の尊重であろう。国民情緒に合うという条件さえ満たせば、韓国では司法は実定法に拘束されない判決を出せる(国民情緒法)。戦時徴用工賠償裁判では日韓請求権並びに経済協力協定の条文の一部を無効とする判決が出ているし、窃盗文化財の返却問題ではユネスコ条約を無視しているし、靖国神社放火容疑者引き渡し問題では日韓犯罪人引渡し条約を無視した。産経新聞韓国大統領名誉毀損問題も、まだ判決は下っていないが、捜査や起訴への過程は裁量的に思える。

2. 国民の納得がいかない条約が日韓関係の基本

孔子が罪刑法定主義を批判し、裁量的な余地がある慣習法を重視したと言うので、儒教国家らしいと言えばらしいのだが、日韓関係の大前提はこれで崩壊する。日韓外交で最も重要な合意は、韓国併合の法的な是非に白黒をつけずに、過去を清算することであった。埋まらない溝で外交関係の樹立が妨げられることを乗り越えたわけだ。今でも韓国で日本統治を無闇に否定する人々がいて*2、日本では誇張気味に肯定する人々がいるわけだが、史実に基づいて両者が合意する事は無かったであろう。しかし、国民の支持がないと合意が維持されないとすれば、灰色の合意は意味が無くなる。

3. 緩やかに日韓関係は崩壊に向かっている

日韓請求権並びに経済協力協定で定められた仲裁委員会の設置や、国際司法裁判所(ICJ)での紛争解決と言う手段は残されているが、出された結果に韓国司法が従うようには思えないし、法的解決は選択肢から外しているようだ。しかし実定法を尊重してくれないと、日韓それぞれの国民情緒が一致するときしか合意が形成されず、しかも合意が維持されるか分からなくなる。これでは関係が維持できない。もはや韓国では日本人の人権や、日本企業などの財産権も尊重されなくなって来ているわけで、日韓関係の行方は芳しいものではない。

*1"'Promises and trust' needed in Japan-S. Korea relations"と言う記事で英訳して紹介している。

*2条約が締結された1965年より、民主化以降の現在の方が反日感情が強いかも知れない。韓国歴史教科書の問題もあるし、テレビ番組などの影響もある。3月2日のBSフジのプライムニュースで東京大学の小倉紀蔵氏が、90年代に従軍慰安婦問題で事実無根の再現ドラマが多く流されていたと指摘していた。

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