2013年11月28日木曜日

女子のための「性犯罪」講義―その現実と法律知識

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京都女子大学の江口氏がしっかりした仕事で心あたたまると評していた吉川真美子氏の『女子のための「性犯罪」講義―その現実と法律知識』を拝読してみた。確かに講義資料のような感じで、どちらかと言えば薄い本なのだが、性犯罪に関して法律面から知っておくべき基本的な事を簡潔に網羅しているように感じる。

第1章で性犯罪の言葉の意味を説明し、第2章で刑事手続(捜査と裁判)の流れを説明しているのだが、これらの知識が曖昧な人は多いと思うので適切な導入のように思う。第3章では判例を紹介しつつ、司法が性犯罪をどのように判断するかを淡々と説明している。第4章では裁判員裁判について、司法の判断が経験則に依存する部分もあることから、現状の男性が多い裁判官だけの審理よりも、女性が参加する可能性が高い裁判員裁判に利点がある事を示唆しつつ、被害者のプライバシーの維持が課題になっている事をあげている。第5章では犯罪統計から性犯罪の実態を俯瞰し、第6章は第5章の続きのように思うのだが、それに加えて被害にあった女子学生へのアドバイスがまとめられている。性犯罪が被害者へ与える影響や、量刑の妥当性についての議論は極端に薄く、個々の価値観に関わる部分は極力排除したようだ。

内容的には社会問題としての性犯罪に興味がある男性が読んでも問題ないし、一部のフェミニスト男性の極端な議論よりは、実証に基づいており得るものが多い。“女子のための”と区切るのは、控えめすぎるタイトルのように感じるが、きっと女子大の指定図書などになっているのであろう。フェミニスト嫌いで性犯罪に関心がある人にお勧めしたい。

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