2023年3月1日水曜日

誤差項の分散に不均一性があるパネルデータにもOLSは使えるよ

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社会学者の柴田悠氏の社会調査協会の『社会と調査』第17号に掲載されたエッセイ「政策効果の計量分析—一階階差 GMM 推定の手順と実際」の話の頭に、パネルデータ分析に慣れていない人を混乱させそうな誤解が書いてあったので指摘しておきたい。

「パネルデータには OLS推定を適用できない…前提諸条件のうちの2つが…成立しない…1つは,誤差はどの国でも均一に生じるという条件…1つは,どの国のあいだをとってみても誤差の相関がないという条件」とあり、個体方向もしくは時系列方向に誤差項の不均一性があるパネルデータには最小二乗法(OLS)が使えないと言う主張がされているが、有効ではなくなっても、不均一分散以外がOLSの仮定を満たせば、不偏かつ一致する推定量が得られるので、あとは標準誤差の計算に一手間かければ問題なく使える。

どういう経緯で柴田氏が誤解したのかは分からないが、柴田氏のエッセイが書かれるちょっと前ぐらいから、パネルデータの不均一分散により注意が払われるようになった。昔は気にされなかったのだが、標準誤差が不正確になるのでクラスター頑強標準誤差を用いなければならない*1ことが統計ユーザーに広く知れ渡り、Stataのパネル分析コマンドは勝手に計算してくれるが、Rでの計算の仕方が分からないので、StataからRに移行できない人々が生じるなどしていた*2。現在ではぽちっと計算する方法が広く知れ渡っており*3、もはや常識である。

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