一票の格差の是正方法を巡って、自民党がアダムズ方式の受け入れを、拒絶しようとしている。1月14日に「衆院選挙制度に関する調査会」で提案された方式で、民主党や公明党など他の政党は支持している。アダムズ方式はなるべく現状を維持しつつ、最高裁の要求した一票の格差2倍以内に沿うような是正を目指した保守的なものなのだが、人口が少ない県から選出されている議員の多い自民党としては簡単には受け入れられないようだ。本来ならば県境越え選挙区の導入などにより格差をなるべく無くすべきである事を考えると、自民党の諦めの悪さが目立つ。
1人別枠方式を否定した2011年の最高裁大法廷の判決を見てみると、投票価値の平等を満たすべき基準としている。特に、「(議員は)どこの地域の選出かを問わず、全国民を代表して国政に関与することが要請されている」とあるので、都道府県ごとに議員を選出する合理性は否定しているし、「人口の少ない地域に対する配慮は・・・全国的な視野から法律の制定等に当たって考慮されるべき事柄であって,地域性に係る問題のために・・・投票価値の不平等を生じさせるだけの合理性があるとはいい難い」と、よくある地方への配慮に関しても退けている。
ただし最高裁は、完全に平等にしろとは主張していない。「都道府県,市町村,あるいはそれ以下の字,町までをも選挙区の区画の基準とするかはともかくとして,一定の行政区画を基準とせざるを得ず,その場合に,各選挙区の選挙人の数を被選挙人の数に応じて完全に平等に設定することは技術的に不可能」としているし、「定数配分及び選挙区割りの基礎」をどうするかは「国会に与えられた裁量権」としている。どのレベルの行政区画を選挙区の基準とするかは国会で定めるべきではあるが、配分方式はなるべく投票価値を平等にすべきと主張していると解釈して良いであろう。
調査会の答申は以上の最高裁の意見を反映したものではあるが、非常に保守的である。アダムズ方式は最大格差を最小にする一方で、ルーズモア・ハンビー指標で見ると全体的な格差をもっとも是正するものでは無い*1。なぜヒル方式にしなかったのであろうか。また、いかなる議席配分方式を取ろうとも、都道府県の人口格差が大きいため根本的な解決にならない*2。参議院選挙から取り入れられる県境越え選挙区(合区)を検討しなかったのは何故であろうか。調査会は最高裁に「比例性のある配分方式に基づいて都道府県に議席配分すること」を求められていると解釈しているが、最高裁は県境越え選挙区を否定しているわけではない。
2011年の最高裁大法廷は投票価値の平等を原則として確認しており、衆院選挙制度に関する調査会の提案は、それをかなり消極的に解釈したものとなっている。自民党もこの辺で諦めて受け入れれば良いような気もするが、所属議員を無碍にはできないのであろう。しかし選挙制度のあり方についての議論の方向性が定まりつつある現在では身勝手な主張にしか見えないので、そろそろ諦めた方が良いであろう。
*1一票の格差と一人別枠方式について考える(2/3) 比例配分の方法と比較 / 菅原琢 / 政治学 | SYNODOS -シノドス-
他に議員定数を増やすのは一つ方法だが、各院最大635席と言う施設上の問題がある上、むしろ議員定数削減を求める声が大きい。
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