2022年11月13日日曜日

全面侵攻から今日までのロシア軍の日別損害状況から分かること

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2月24日のロシアのウクライナ全面侵攻開始から262日が経過したが、ロシア軍は

  1. 電撃的な首都制圧によるウクライナ全土の掌握
  2. 東部と南部からの支配地域拡大によるウクライナ全土の掌握
  3. 東部ドンバス地方の完全な掌握
  4. 東部ハリコフ州や南部ヘルソン州の占領地の維持

と言った戦略的目標(と想像される事項)の達成を次々と諦めているようだ。当然だが、目標変更は戦況を反映しており、今後のロシアの動向も戦況によって変わってくる。情勢を把握するためにロシア軍の被害状況の推移を確認してみたい。

日々のロシア軍の損害は人員や戦車や爆撃機など多岐の項目に渡り、全体としてその大きさが把握がしづらい。戦車の被害が多いが航空機の被害がない日と、戦車の被害は少ないが航空機の被害が多い日のどちらが大きな損害の日と言えるのであろうか。一次元的に評価したい。主成分分析をかけて第一主成分を全体の被害状況と見做してみよう。

それらしい動きが抽出できた。 さて、ロシア軍の損害で見ると、

  1. 初期のキーフ制圧を目指した時期(~3月25日)
  2. 東部と南部からの支配地域拡大を目指した時期(4月3日~5月20日頃)
  3. セヴェロドネツク陥落の時期(5月20日頃~8月20日頃)
  4. ウクライナ軍の東部ハリコフ州と南部ヘルソン州での反転攻勢(8月末~現在)

で被害の大きさが変化してきたことがわかる。(a)(b)(d)はロシア軍が戦略を変更することになった一方、(c)はウクライナ軍が反攻に出るまで方針を維持していたので、(c)の時期の損害でなければ長期に活動が不可能であることが示唆される。また、(d)の損害を見ると以前の山ほど高くはないので、ロシア軍の忍耐力が低下している可能性も高い。

今後の展開としては、(c)の時期の損害ペースに戻せるかが問題になる。(c)の時期はロシア軍がウクライナ軍の10倍の火砲を投入していた時期だが、ウクライナ軍は欧米から榴弾砲、自走榴弾砲、長距離ロケット砲の支援を受け火力を増強し、ロシア軍の補給線を叩いて火力を削減する戦術に転換して成功を収めている。これにロシア軍が上手く対抗策を見い出せるかが、今後の展開を左右する。

現在までの戦地からの情報を見ると、防御陣地プーチン線に篭もるロシア軍にウクライナ軍が坑道戦を仕掛けるような展開になりそうではあるが。

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