2022年10月8日土曜日

AV新法でどれぐらいポルノ業界は混乱したのか? — 10月発売タイトル数から考える

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AV新法の施行を受けて、6月くらいからネット界隈でAV女優と表現の自由戦士からアダルトビデオの撮影がまるで不可能になったかのような主張が声高にされている。

AV女優は当時者だし、業務への影響が大きいと困惑する業界の声も報じられている*1ので無根拠とは言えないが、一部界隈が言うようにAV女優失業法とまで言えるか量的側面からの評価がされていない。

1. AV新法はポルノ作成費用を引き上げる

確かにAV新法は、必ず書面で詳細な契約を義務づける上に、契約をしてから撮影前に1ヶ月間の猶予を置き、撮影後に公表まで4か月の猶予を置き、さらに公表後1年間(施行後2年間は2年間)は出演者の随意で出演契約を解除して公表を停止する努力を要求でき・・・と*2、潜在リスクを含めて製作コストが上昇する内容ではある。製作コストの上昇に耐えかねて、製作を諦めるプロダクションが出てきてもおかしくない。

2. 10月以降の落ち込みで(雑に)定量的な評価ができる

では、どれぐらいのプロダクションが製作を諦めるのであろうか。AV新法施行後、製作がストップしているとか、難航していると言うような話はぼちぼちと関係者であるAV男優やAV女優からツイートされている。仕事が無いのでAV女優を廃業した宣言もあった。しかし、定量的な被害の評価はされていない。撮影から公開までの一定の時間がかかる以上、内部情報ならばともかく、外部から確認できるデータに反映されるまで何ヶ月もかかるからだ。

ポルノ撮影の実態はよく分からないのだが、話によると「AVの撮影後、どのくらいのスパンでDVDが発売されるのでしょうか。売上が見込める単体作品に関しては、大体3ヶ月くらいの期間を要します。」「素人系のAV(企画作品)は、撮影後からDVDが発売されるまでの期間が短く、大体1ヶ月」とされる*3。AV新法で撮影開始まで1ヶ月、撮影から公開まで1ヶ月ぐらい伸びると考えることができる。6月23日施行なので、7月を考えよう。従来だったら7月に契約・撮影を終えて、10月に発売できていたスケジュールが、7月に契約、8月に撮影、12月に発売と伸びることになる。制作会社が新法対応が上手くできなかった場合は、10月と11月は新タイトルの発売ができない

3. 実際の影響は限定的に思える

さて、新タイトルが発売される1ヶ月前までには、通販サイトで予約できるようになるようだ。10月になって、10月の新タイトルの発売本数が把握できるようになった。実際にAV新法の影響がどの程度出ているか評価してみよう。

確かに影響は出ているようだ*4。2020年と2021年に発売タイトル数が増えていたのだが、落ち込んでいる。しかし、ゼロではなく、2019年10月、2020年10月、2021年10月の発売タイトル数より多い。つまり、6月中に契約と撮影を済ましていたプロダクションが少なくないことがわかる。しかも9月の発売タイトル数は減っていないので、従来だったら9月に発売するタイトルを10月に回したとも言い難い。

4. 11月、12月の数字も見る必要はあるものの

11月、12月がどうなるかは分からないが、計画的にAV新法に対応は可能で、実際に対応したのでは無いであろうか。男優の代役が立てられないと言う指摘もあるが、代役とも条件付き出演契約を結んでおき、女優の契約書に代役の名前も入れておけば、合法的に代役を立てることもできる。必要以上に厳しいなと思う法律ではあるのだが、表現の自由戦士が騒ぐほどの悪法ではないかも知れない。

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