2017年4月1日土曜日

人文学は何の役に立つのか?

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個人が学費を払って学ぶ意義は何か、研究・教育に公的補助を与える意義は何かと言う質問に、医歯薬系など技能や資格の習得に直結しない分野の研究・教育者はいつも回答に困っている。もっとも、多額の費用と学習努力が必要な理工学分野の方が深刻で*1、専門的な事を熱心に勉強したいわけではないが、大学卒業資格は欲しいと言う層からの需要で補助金なしに経営が成り立ってしまうので*2、人文学分野の研究・教育者がこの問いに答える意欲は低い。だからと言って、理屈をつけられないわけでもない。

1. 研究・教育に公的補助を与える意義

研究・教育に公的補助を与える意義は、比較的容易につけられる。あれこれ議論になる社会問題を見ると、人文学に分類される歴史や倫理の知見を借りてこないと議論が進まないことは多い。社会保障を正当化するために、厚生労働省はロールズの哲学を借りてきている*3。格闘技に追加された銃剣道がどのようなモノかを把握するには、第二次世界大戦中に実用性が皆無であることが露呈したその歴史*4を把握する必要がある。研究や学習を止めてしまい、無根拠で好き勝手なことを言っているだけの大学教員も見かける気がするが、真面目にやっている限りは役に立つ。

2. 個人が学費を払って学ぶ意義

研究者にならない個人が学費を払って学ぶ意義は何かは明瞭ではないが*5、日本に限らず企業は否定的には見ていない。ウォール・ストリート・ジャーナル誌は、経営学の価値に関する記事の中で「採用担当者の大半は、経営学専攻の学生をあからさまに避けたりはしないが、コンサルティング、テクノロジー、さらには金融業界の企業でさえ、より広い学問的バックグラウンドを持った候補者を捜している」ことを指摘している。これは裏を返せば、人文学にも経営学と同等の需要があると言うことだ。米国では学部では歴史を専攻していた著名経営者はそこそこ見かける。フィオリーナ様(;´Д`)ハァハァ

日々の業務に役立つ気はしないので意外なのだが、無駄になるとも言えないのであろう。海外進出をした後に文化的軋轢が生じるケースはそこそこあるし、東京電力の中で一定の影響力を持つ人に地震考古学への理解があったら、福島第一原発の津波対策はもっとしっかりしていたかも知れない*6。ソーシャル・メディアの運営で、倫理に関する議論が沸き起こるのは常日頃。業務上必要になってから調べれば良いと思うかも知れないけれども、問題が露見してから必要性に気づく事は多いだろうし、何かを調べるときには関連分野にしろ土地勘がある方が効率が良いのは確か。個人が学費を払って学ぶ意義も、少なからずあると言える。もちろん理工系と同等の熱心さで学ばないと身につかないわけで、うぇーい言って遊んでいたら意味はない。

3. まとめ

全ての人文系学問が役立つとは言えないし、人文系学問も色々と近代化しないといけない面もあるであろうし、企業ニーズよりも人文系の卒業生の供給が多いと言う問題は別に残るのだが*7、人文学は役に立っていることは容易に言えると思う。人文学分野の研究・教育者は需要者の都合を考えて活動しているわけではないのであろうが、人文学自体をそう否定的に捉える必要は無い。

ビバ!エイプリル・フール!(・∀・)ニヤニヤ

*1理工系言えども学生時代の専門と関係の無い仕事をしている人々は多いし、人文系から理工系の仕事に就いてしまう人もいる(朝日新聞)。化学専攻だったのにマイクロプロセッサーを発明した人もいたが、これも関係がありそうだが直接の関係はない事例になるであろう。

*2役立つとされる理工系に比較して、設備や機材に費用がかからず、さらにマスプロ教育が可能であるので費用がかからない。私学補助金がなくなれば、私立の理系学部は無くなると言う話も囁かれている。

*3平成24年版厚生労働白書の第2章「社会保障と関連する理念や哲学」を参照。

*4関連記事:大日本帝国陸軍のへたれっぷりが分かる『日本軍と日本兵』

*5教養があると幸福度が上がると言う議論などもあるが、ここでは考察しない。

*6福島第一原発と異なり女川原発が津波によって大きな被害をうけなかった社会的理由として、土木技術者の平井弥之助氏らが貞観地震をよく研究していた事がよく言及されている。ただし、平井氏自体は地震考古学を学んでいたわけではない。

*7特に日本の場合、女子が人文系へ進学しすぎと言う問題がある。

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