2015年9月11日金曜日

楕円関数を知ったかぶりするためのタダ本

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数学徒でもないのだが、数学者の志村五郎氏が勉強しておけと繰り返して強調している*1楕円函数を知ったかぶりするために、竹内端三『楕圓函数論』を拝読してみた。近代デジタルライブラリーで画像が公開されているし、綺麗にTeX起こしをしてPDF化されたものもあり、本代もかからない。志村氏のほかにもTwitter界隈の数学教員もよく推奨している名著である。なお志村氏曰く楕円函数は大して発展していないので、内容も古くは無いようだ。

ぱらぱらと読んでみたところ、リーマン面ぐらいまでの複素解析、学部程度の線形代数、基本的な群論の知識があれば、そう概念的に難しい話は無い。しかし、読み始める前に、一つの問題の存在を認識しておいた方が良いと思う。楕円の弧長を求める問題だ。これを認識していないと、密林の中を進んでいる気になる。実感が沸かない。

以下のような(x, y)座標の楕円の方程式を考えよう。

この弧長Lは以下の積分で表される*2

この積分のところを取り出して、zが複素数のケースを含めて、これを抽象化してその性質を調べたのが、楕円函数論と理解して良いであろう*3。本書では第四章40節に説明があるのだが、そこに辿り着くまでどこが楕円なのかよく分からなかった*4。もっとも歴史的な議論はともかく、今は有理型の二重周期のある複素函数のことを楕円函数と呼ぶようになっているそうだ。

楕円函数の名前の由来など書いている余裕は無いのであろう。本書では第一章の表題は楕円積分ではあるが、細かい前置きなしに楕円函数を標準形に持ち込み積分しようと言うところから、sn函数、℘函数、テータ函数などの関数が出てきて、加法定理や函数間の関係が調べられていき、最後の方で楕円の弧長が求められるようになって、さらにモジュラー形式が説明される。なお出てくる函数や概念は、数学もしくは物理で後々使われているのだと思われる。

そう分量があるわけでもなく、楕円を考えていたら虚数平面上の平行四辺形に悩まされている*5ことになる面白さはあるのだが、式の展開などを考える作業的な要素が多いので数学徒であれば、連休などに気軽に取り組んでみて良いと思う。日本語(e.g. 夫々)などを検索しないと読めないところなど、さすがに本が古いかなと思う所はあるが。応用分野が思いつかないので文系の人にはお勧めしない。

梅村(2000)を見ると複素トーラスなどが出てきて複素多様体として捉えている気がするし、五次方程式の解の導出など応用事例ももう少しあるので、本書を読んでも楕円関数をしっかり学んだとは言えないかも知れないが、知ったかぶりをするならば十分であろう。℘函数の定義を暗誦できるだけでも院試口頭試問ぐらいの知ったかぶりになるそうだ*6。もちろん、知ったかぶりは相手を見てするのが原則なので、そこは間違えないように (´・ω・`)

*1著作の「数学をいかに使うか」で「複素解析、特に楕円関数」の章があるし、「数学をいかに教えるか」でも解析学のテキストに入れるべきだと主張している。

*2ピタゴラスの定理からdy2+dx2の平方根が円弧の微小要素となるため、これを積分すればよい。なお本書では、dx/dzとdy/dzを微分して求めて式を整理していくところは、当然のように省略されている。

*3これは本書で言う第二種標準形でしかないので、定義が拡大しているとも言えるかも知れない。

*4数学徒は説明されなくても認識している気がしなくもないが。

*5二つの周期がそれぞれ複素数で表されるので、複素平面上でその二点とそれらの合計が構成する平行四辺形を考える事になる。

*6言わずもながだが、暗誦できたからと言って合格するわけではない。

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