2017年9月8日金曜日

北朝鮮の核兵器開発は中国離れのため

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金正恩政権になってから、北朝鮮の核ミサイルの開発における実験回数が大幅に増加しており、弾道ミサイルの方は射程距離が大幅に増加し*1、核爆弾の方は160Kトンの爆発規模に到達している事が確認された。核ミサイルとしての技術的課題はまだ残されていると考えられるものの*2、このまま行けば数ヶ月から数年といった近い将来、実戦配備されることはほぼ確実と見られている。

1. 核兵器開発は規程路線

既定路線を歩んでいるのは間違いない。北朝鮮の核兵器開発は1950年代から始まっており、1990年代に具体的な開発が開始され、1994年6月にクリントン政権が空爆を検討したことは良く知られている。その後、周辺国は援助などと引き換えに核兵器開発を断念させる事を画策したが、失敗。2003年に核拡散防止条約(NPT)即時脱退を表明。2006年10月に、最初の地下核実験が観測された。

2. 米韓への抑止力は足りている

さて、核抑止力を持つことが開発目標なのが公言されているが、何のために核抑止力を持つのであろうか?

北朝鮮と韓国の軍事バランスが韓国側に傾いていることを想像する人が多いと思うが、軍事リスクの高まりが核兵器開発を促進してきたわけではない。中朝友好協力相互援助条約による中国政府の軍事支援があるため、米韓が軍事的に北に侵攻する可能性はほとんど無かった。実際、北朝鮮は米韓に激しい実害を伴う挑発行動をとっている*3。また、1991年に北朝鮮は国連に加盟しており、独立国家として日米韓から承認される可能性もあり、核開発を本格化される以前は軍事リスクは低下していた。

朝鮮半島からアメリカの影響力を排除する事が目的であると指摘する人もいるが、核兵器の保有によって核保有国のアメリカを意向を左右する事は難しい。ソ連/ロシアは米国に無理な要求を呑ませる事に成功していない。むしろ韓国の対米依存を強化するし、そうで無い場合は韓国の核兵器保有をもたらす。米韓を理由に核抑止力を持つ必要は、言うほど高いものではない。

3. 中朝関係は蜜月か?

発想を逆転させて、中国を考えてみよう。北朝鮮と中国の間の外交バランスは、軍事・経済依存度から圧倒的に中国優位となっている。しかも、中国経済の躍進と兵器のハイテク化によって、中国依存度は増加している。しかし、中朝関係が蜜月だと考えるのは安易だ。金正恩体制になってから相当数の要人が粛清されているが、親中派が多数含まれていることが報じられている。実態として中国に亡命していた、義兄である金正男氏も暗殺されている。

中国の外交節に辟易している日本人は多いと思うが、北朝鮮に対しても高圧的なのは想像に難しく無い。白頭山の領有権で対立している事も知られている。核開発でも金体制が崩壊しない程度には、圧力をかけている*4。北朝鮮と中国は必ずしも利害関係が一致しているわけではない。北朝鮮が外交バランスを動かすには、中国への軍事・経済依存度を下げる必要がある。経済依存度は困窮を我慢すれば耐えられるかも知れないが、軍事依存度は我慢だけでは下げられない。

核保有国になることで米韓に対して核抑止力を持つと同時に、中朝友好協力相互援助条約の重要性を低下させられる。核開発の現実的な狙いは、これでは無いであろうか。朝鮮戦争が再開されても、有言実行でソウルを火の海にすることができるわけで、中国人民解放軍がやってこなくても米韓は大きな打撃を受けることになる。条約を破棄されるようなことになっても、米韓に対しての朝鮮戦争の再開抑止になるわけだ。

*1Inside North Korea’s Accelerated Plan to Build a Viable Missile - WSJ

*2Can North Korea Actually Hit the United States With a Nuclear Weapon? - The New York Times

*3韓国人拉致被害者数は多く、大韓航空機爆破事件、超精密偽100ドル札偽造(スーパーノート)、韓国哨戒艦「天安」撃沈事件、延坪島砲撃事件、暗殺事件(ラングーン事件、朴相学暗殺未遂事件)など、開戦に至っても不思議が無いものばかりだ。

*4抜け道があるとは言え、原油パイプラインを締めたりしているのは確かだ(朝日新聞)。『【寄稿】 中国は北朝鮮にどれほど影響力があるのか - BBCニュース』では、体制崩壊までいかない程度に圧力をかけていると見ている。

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