2017年4月14日金曜日

こども保険は嫌税政権での現実的な妥協案

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公的年金保険料を増額して未就学児の児童手当の上乗せと保育所の拡充を図る「こども保険」だが、保険と言うよりも所得分配政策に近いので、経済学者の島澤諭氏「違和感を感じる」、中田大悟氏が「理解に苦しむ」と批判している一方で、公的年金の賦課方式において子育てをしない家計が出てくるフリーライダー問題を緩和する機能があると、小黒一正氏が『「こども保険」の理論的な整理』でその意義を紹介している。

世代間扶養を前提とした公的年金は、現役世代が払った保険料が、高齢世帯の給付金額になる。ある世代(t世代)への給付が、その次の世代(t+1世代)の人口に依存するのだが、t世代の中で経済的負担を行い妊娠・出産をした子持ち家計も、そうでない子無し家計も同じ年金給付を受け取る。子育てによる経済的負担を敬遠しつつ、公的年金を享受するある種のフリーライドが可能になるわけだ。話題の「こども保険」は、これによる不公平を是正し、上手く行けば少子化を緩和することができる。将来の年金給付額が増えれば、子無し家計の生活も改善する事になる。

欠点は(繰り返しになるが)保険らしくないと言う事、現在の高齢世帯に負担がないことから少なくとも当面は現役世代全体の負担削減措置にはならないことが挙げられている。しかし、現在の高齢世帯への負担増は他の施策で行なう事もでき、実際、高齢者医療の自己負担比率は引き上げられることになった。また、社会保険には給付と負担には密接な対応関係は求められていないかも知れないし*1、加入者がリスクをコントロールできる事象に給付を行なっても無問題かも知れない。その強制性を考えると、社会保険は限りなく税に近い。なお小黒氏は、公的年金の問題を解消する施策なので、公的年金制度に位置づけるのは妥当としている。

人頭税的な社会保険料よりも、消費比例になるので高所得者・高資産家負担が高く、また高齢世帯にも負担を求められる消費税の税率を引き上げて、それを児童手当と保育所の拡充の財源にする方が望ましいと言うことは分かるのだが、安倍総理は理由はともあれ極力“増税”はなるべく回避したい方針だ。一方で、安倍政権と言うよりは自民党内からの声であろうが、財政健全化目標は維持しているので、赤字国債による歳出拡大も望みは薄い。安倍内閣が終了するのを待つと言う選択肢もあるが、自民党内からは交替を求める声はなく、選挙で自民党が負ける見込みも無い。なるべく早期に児童手当と保育所の拡充を実現したい場合は、こういう詭弁に見えるような施策もひとつの妥協案になるのは確かだ。

*1遺伝疾患は保険対象外にすべきと言う議論は見かけないし、健康増進インセンティブをつける目的を除いて、不健康な人の保険料を引き上げるべきと考える人は多くは無いようだ。なお、男性が妊娠させられる年齢は60歳よりもかなり高く、女性も確か60歳と言う例がないわけでもないので、養子を取る可能性を除いても、未就学児を持つ可能性が完全に無くなる年齢層は年金保険料を納めている人々にはいない。

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