2015年7月29日水曜日

朝日新聞の憲法学者へのアンケート結果にある“現在の”自衛隊の存在の是非

このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote
Pocket

新安保法案に関してテレビ朝日(報道ステーション)のアンケート結果が話題だったせいか、朝日新聞でも憲法学者へアンケートを行い結果を公表している。多数が新安保法案に憲法違反にあたるとしている所は同じだが、「質問4 現在の自衛隊の存在は憲法違反にあたると考えますか」の結果から自衛隊も違憲だと連呼している人がいる*1のだが、このアンケート、そのまま信じるべきかは疑問があるので理由を列挙しておきたい。

1. 有効回答数が比較すると低い

209名に依頼を行い、有効回答数は122名(約58%)となっている。この回答率は低くは無いが、記名式になっているので、政治論争に関わりたくない人は回答を回避した可能性がある。テレビ朝日の方は198名中151名の回答があり、76%となっているからだ。つまり、政治的左派に偏って抽出されている可能性がある。

2. 存在が違憲なのか、現在のあり方が違憲なのか

「現在の自衛隊の存在」の是非を聞いているのだが、どこを憲法違反と考えているのか明確ではない。教科書的には自衛権の全面放棄説と限定放棄説を教えていると思うが、限定放棄説でもPKO活動など特定部分を指して違憲と言う事はありえる。なんせ「現在の」と聞いているからだ。また、「~可能性がある」は複数学説があるので態度保留と見たほうが良いであろう。

3. 自衛隊を廃止すべきか否か

自衛隊を廃止すべきか否かを聞いていない。「質問5 憲法9条の改正について、どのように考えますか」で憲法9条の改正必要性はないのが多数派となっており、違憲で改正必要なしであれば自衛隊を廃止を主張しているように読めてしまう。しかし、限定放棄説で現在の自衛隊運用の一部が違憲と考えていれば、憲法9条の改正も自衛隊廃止も必要なくなる。どちらか判別するには、自衛隊の存続の是非も聞いておく必要があった。

4. Pで無い可能性があるならば、¬Pで無い可能性もある

回答項目が排他的ではない。回答項目がよく練られていない。「憲法違反の可能性がある」と「憲法違反にはあたらない可能性がある」の違いが分かるであろうか。同じ意味の質問をしている。「(合憲だと思うが)憲法違反の可能性がある」と「(違憲だと思うが)憲法違反にはあたらない可能性がある」と言う意味な気もするのだが、予断になってしまう。

5. 芦田修正などを考えると奇妙な結果

細かい読み方なので詭弁に思えるかも知れないが、自衛権を維持するためにGHQの憲法草案に芦田修正が加えられたことが理解されてきたこと、「具体的な争訟性を備えた憲法訴訟となりにくい分野における内閣法制局の憲法的機能は,最高裁判例に匹敵する」*2と考えられることなどから、昔の安保闘争時代の憲法解釈が安定的とは限らないことを認識していると、細部の違和感を無視できない。

6. まとめ

こういう理由で朝日新聞のアンケート自体は、自衛隊を明らかに違憲と見なさない憲法学者も、現在審議中の安全保障関連法案を明らかに違憲と見なしていると読むべきであって、現在の自衛隊の存在の是非についての根拠にはしない方が良い。なお質問4に関して紙媒体ではなくウェブだけで公表されたことが気になる人々もいるようだが、朝日新聞もアンケートに問題があることを薄々気づいていたのであろう。

*1憲法学者は非現実的だから、新安保法案が違憲だと言うのは無視すべきと言いたいらしい。

*2大石(2007)「日本国憲法と集団的自衛権」ジュリスト, No.1343, 10月15日

0 コメント:

コメントを投稿