2014年2月26日水曜日

STAP幹細胞騒動に関して素人が心得るべきこと

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理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子氏が開発したとされる刺激惹起性多能性獲得(STAP)幹細胞を巡って、騒乱が続いている。最初は、若手女性*1研究者の大発見と言う物珍しさからの報道が続き、次に小保方論文の信憑性が疑われはじめた*2。これは発見自体が間違いであった可能性と、論文の根拠が捏造であった可能性の二つの意味がある。さて、こういう問題に関しては暗黙の作法「(´ー`)フーン」があるのだが、それをわきまえていない人が多いようだ。

1. 研究のサイクル

この世には研究のサイクルと言うものがある。大雑把に、研究者は何か発見をし*3、それを論文を書いて専門雑誌に投稿を行い、編集部が研究が雑誌の趣旨と合致しているか判断したあとに、匿名の専門家である査読者が“もっともらしい”かを審査を行い、そこで問題がなければ受理される。こうして掲載された論文が他の研究者の目に止まると、追試を含む検証がなされて、さらに研究を発展させていく。

2. 論文掲載は出だしに過ぎない

小保方論文は、専門雑誌に掲載された段階でしかない。査読者が論文体裁が“もっともらしい”と判断したにすぎず、その内容に決着がついたわけでは無い。原理的には査読者が隅々まで目を光らせることのできる理論論文でさえ後日問題が見つかる事もしばしばあり、小保方論文のような生命科学だとかなり多くの研究の再現性が無いことが問題になっている。

3. 再現性こそが鍵になる

どんな大発見も追試が行われ再現性がとれたときに始まるぐらい思っておいた方が良い*4。NASA宇宙生物学研究所のFelisa Wolfe-Simon博士の必須元素のリンをヒ素で代替する極限微生物の発見が大きく取り上げられていたが、コロンビア大学のRosie Redfield氏が実験結果の解釈に誤りがあると示した。小保方論文が掲載されたNature誌では1988年にホメオパシーを擁護するようなベンベニスト論文が掲載され、その後の検証で致命的な問題があると取り下げられた。そういう面では初期のメディアの取り上げ方は異常であり、現在のネット上の失望は大げさすぎるように思える。

4. 捏造も珍しいことではない

論文に捏造部分があればスキャンダルではあるが、残念なことに、そういう事件も別に珍しいわけではない*5。個別の論文が間違いなのか捏造なのかの判定には議論が残るようだが、論文取り下げになったケースの4割強が捏造だと考えられているようだ*6。残念なことに小保方論文に問題が見つかったとしても、国辱のように思う必要もない。メディアで大きく取り上げられたケースでも、こういう事はある。

5. 現段階で小保方論文の評価はできない

今の段階で、小保方論文に間違いがあるのか、そもそも捏造なのかを断定することはできない。再現性が無いからと言っても、小保方論文と完全に同じ手順の研究はないようだし、もし間違いがあってもマイナーなミスでしかない可能性はある*7。ミスが見つかってそれが公表されても、実験系生物学で同様の研究をしている人でないと、問題の大小を論評することも難しいであろう。ましてや捏造だと断定するには、小保方氏に死ねと言うようなものなので、かなり強い根拠がいる。

6. 新発見とは距離を置くべき

大発見に対する暗黙の作法とは、ポジティブなニュースにも、ネガティブなニュースにも距離を保つことだ。話題にするのは悪い事ではないが、毀誉褒貶は抑制的であるべきであろう。今回のケースでは最初の段階でメディアが小保方晴子氏をアイドルのように扱ったのがそもそも間違いなのだと思うが、手のひらを返すように叩き出すのも同様に問題だ。研究業績はスポーツなどと違ってその評価が確定するまで時間がかかる。

*1女性研究者が珍しい時代でもないと思うのだが、そういう捉え方をしたメディアが多かった。

*2小保方晴子が筆頭著者の論文の不適切さについて」を参照。

*3分野によっては発見をしてから書くと言うより、書きながら発見をしていく感じになる。

*4特に実験などで再現性が取りやすい分野は再現性が重要になる。iPS細胞でノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥氏が「iPS細胞とSTAP幹細胞に関する考察」と言うエッセイをあげ、その中で再現性や互換性の重要性を強調している。

*5日本でも東邦大学准教授の事件、東京大学附属病院の研究者の事件や、東北大助教の女性研究者の事件など数多くある(関連記事:iPS細胞による「世界初の心筋移植」の報道について)。

*6捏造による論文取り下げ率」を参照。

*7致命的なのは電気泳動画像の流用やコピペ、つまり観測結果の誤魔化しは論文の結論を左右する可能性がある。しかし、弁解の余地が無いとは言えない。胎盤画像も同様の問題があるが、加工した形跡は無いので単なるミスの可能性は高くなる。剽窃と指摘されている核型分析の説明は、モラル的には深刻ではあるが、単なる実験方法の説明であるので論文の結論を揺るがすものではない。

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