2025年6月27日にデジタル庁の「ガバメントクラウドにおけるモダン化の定義」が修正され、自治体システムのガバクラ移行の必須要件ではないと明記された。この文書、技術的に頓珍漢に思える部分が多数あるので何度か検証してきたが*1、国語的にも奇妙だ。
題名からしておかしい。「ガバメントクラウドにおいて推奨されるモダン技術とその利点」にすべき。ガバメントクラウドにおいて推奨されるモダン技術とその利点を説明しようとしている文書であって、モダン化の定義は大雑把な言及しかない。執筆者が文章の目的を理解していないように思えてくる。
下記の最初の節も、読み飛ばされているのか問題にはなっていないが、よく読むと困惑する。
なぜモダン化が必要なのかガバメントクラウドは、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」の実現に貢献するため、データの安全な連携を可能とし、ニーズに合わせて柔軟に対応できる情報システムを実現する共通基盤を目指している。
情報システムのモダン化は、外部環境の変化に合わせて情報システムを変更していくプロセスである。例えば、手続き処理が紙ベースからシステム化されることに伴い、技術的には大規模大容量のデータを取り扱えるようになった。さらに、ネットワークやプロトコルがコモディティ化し、疎結合な仕組みによるデータ連携が一般的になっている。
上記を実現するためには、新しい技術を活用し、システムの価値を高める必要がある。一方、ガバメントクラウド上で稼働する公共情報システムには安定性も求められる。そのため、ガバメントクラウドでは最先端の実験的な技術ではなく、ある程度一般化した新しい技術を活用する方針を採用しており、これを「モダン化」と呼んでいる。
情報システムの開発運用の安定化およびコスト最適化の観点から、レガシー技術からモダン技術を採用して情報システムを変更していくことが重要である。
つまり、
- デジタル庁のスローガンが引用されているが、これからして日本語として奇妙である*2
- 技術進歩によって情報システムが刷新されることを説明したいのだから、「技術的に大規模大容量のデータを取り扱えるようになり、手続き処理が紙ベースからシステム化された」と書かないといけない
- 二つ上の段落の話をしているわけで、「上記」ではなく「デジタル庁が目標とする社会」と書かないと読み手の負担が大きい
- 「システムの価値」は未定義なので、意味不明になっている。「データの安全な連携を可能とし、ニーズに合わせて柔軟に対応できる」ことを「システムの価値」と呼んでいる気もするが、その場合は第一段落の主張を繰り返していることになる
- ガバメントクラウドでどのような方針を採用しているのかの説明と、なにをモダン化とするかの説明を同時に行ってしまっている。また、第2段落の情報システムのモダン化と別に、(ガバメントクラウドの)モダン化を説明する必要が明確ではない
- モダン化の対象が不明瞭である。後の推奨技術の紹介の前段だと考えると、ガバメントクラウド上で動くアプリケーションのモダン化の必要性を謳わないといけない
と言う問題がある。
文句だけつけても分かりづらいので、書き直してみよう。
元の文にある「安全な連携」は、推奨技術の説明で通信経路のセキュリティへの言及が無いので省略した。推奨技術の説明で重視されるスケーラビリティは、安定稼動とコスト最適化に寄与するものなので明示しなかった。
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