2025年10月11日土曜日

石破総理の戦後80年ねっとり所感は、戦後日本の保守政治家の思想として、語り継がれるべきもの

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出す出さないで物議のあった石破茂総理の戦後80年所感が表明され、称賛と賛同が多く表明されていた。批判もあるが一定の価値を認めた上で、植民地主義(拡張的領土政策)への批判や周辺国への謝罪が明確にない*1事や、閣議決定を経ない手続き上の点*2を指摘するものが大半だ。所感の内容自体は、概ね妥当なものだと認められている。

石破ねっとり戦後80年所感は、太平洋戦争に至る政治過程をより深く振り返り、戦後の政治家が漠然と共有してきたであろう教訓を、しっかり言葉にして引き継ごうとしているのが特色だ。細かい難はなくもないが*3、文意は明確に伝わり説得力がある。植民地主義を漠然と非難し、ただ平和主義を謳うのではなく、具体的に何が失敗であったのかという見識を引き継ごうとしている。教訓に「国民全体の利益と福祉を考え」とあり、安易に人道主義の観点を持ち込んでいるわけではない。日本人第一主義者であっても拒絶し難い観点だ。

安倍元総理の戦後70年談話は、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちに変わりは無いとしつつも、戦前の日本に肯定的な評価も与えつつ、日本の対外侵略戦争の一因として欧米経済のブロック化があったことを強調し、周辺国に謝罪を続けることを拒絶しつつ、世界の平和と繁栄への貢献を謳ったものであった。安倍元総理の信奉者が多い「保守」界隈は、反省とお詫びの気持ちと、世界の平和と繁栄への貢献以外の安倍談話の内容を継承している。限界保守から、右派排外ポピュリズムに転落した。

石破戦後80年ねっとり所感は反省に焦点をあてることで、戦後日本の保守政治家の思想がいかなるものかを「保守」界隈に示している。彼らの心にも響けばよいのだが。

*1論点を絞ることで文は読みやすくなっていると思われる。

*2何ら政治的コミットメントがないので、本来は閣議決定が要ることではない。また、これまでの戦後談話と矛盾するような論点もない。

*3予備知識が無い人のために人名、組織、事件名に脚注が欲しく、反省と教訓、利益と福祉は概念が一部被っている。後者は意図的なものかもだが。

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