高市早苗氏が自民党総裁に選出された。野党が突然団結でもしない限り、高市内閣が発足する見込みだ。
高市氏は、保守を名乗る急進右派嫌税排外ポピュリズム色の強い発言をしてきた政治家で、安倍元総理の思想的後継者として振る舞おうとしている人物だ。実際、「保守」界隈で強い人気があり、岸田〜石破内閣で離れた「保守」界隈の有権者の支持を集めることが期待されている。
「保守」界隈は、外交、通商、財政で従来政策のラディカルな変更を求める急進主義であり、国民に国家に対する忠誠を求め、文化や思想の統一を求める右派であり、それらは反技術官僚*1、反専門知となる大衆迎合的な主張になっている。また、無根拠な主張の他、嘘や誇張も辞さない面があり、扇動的だ。
日本の場合、20年ぐらい前ぐらいから中国の軍事的圧力、韓国の反日運動などから存在感があり、円安による外国人の観光客や投資家、少子高齢化による外国人労働者の増加を背景に、勢力を増しているようだ。外交タカ派で反国際協調に嫌税が付属しているのが謎ではあるが、これは「保守」界隈を上手く支持者に取り込んでいた安倍元総理がリフレ派であったためだと推察される。収益目的の動画配信者によるものか、アメリカのMAGAに感化されたか、ロシアあたりのSNS工作の影響があるのか、近年はデマの発信・拡散が問題になっている。
これまでの高市早苗氏の言動は、右派財政排外ポピュリズムに分類されるものだ。高市氏は
- 2008年に刑罰のある有害情報規制法案、2021年に国旗損壊罪の策定に動いており、表現規制や思想統制に関してラディカルな強化を目指している(いた)。国旗損壊罪は、国民に国家に対する忠誠心を強く求める法規制だ。1996年1月9日付の世界日報に「私は家長制度が復活してもいいと思う」という発言が掲載されたと言う噂もある。
- 財政問題に関して、SNSの嫌税派と同調し、財政/経済学者の主流派と官僚とはかけ離れた見解を示している。例えば、2022年に岸田内閣の防衛費増額に向けた財源確保法に、経済成長の自然増で賄えと反対していた。
- 外国人土地売買規制を主張しており、排外的である。これは、法技術的に無理がある。既に(2022年9月施行の重要土地等調査法で確認されたように)安全保障上の必要がある土地は政府が強制買収することができ、さらにそれを超える範囲の規制はWTO協定違反になるからだ。
- SNSやYouTubeに流れるデマや誇張が多い情報の請け売りがある。通訳不足で外国人が起訴されないと言うような、根拠不明で司法への信頼が失われかねない事を堂々と主張していた。奈良公園の鹿の話も、騒いでいる界隈は前科者の迷惑系動画配信者が中心になっており、信憑性はおして知るべしだが、問題として取り上げた。
選択的夫婦別姓に反対していたりと保守的な面もあるが、全般的には急進右派嫌税排外ポピュリズムとなっている。
これまでの高市早苗氏の言動に関わらず、高市氏が本当に急進右派財政排外ポピュリストかは分からない。2007年に表現規制主張者の中心にいたのに、2021年のアンケートでは表現規制に慎重な姿勢を見せた。首相になってもどう非難されても絶対に続けると言っていた靖国神社参拝を、時期をずらすなどを示唆し柔軟な姿勢を見せている。代表戦の最後に麻生元総理が高市氏支援にまわったが、現時点で報道されている人事は麻生氏の意向に沿っているようだ。財政問題は従来路線の維持が予想される。
高市早苗氏が自民党総裁になったことで、これまで自民党に協力してきた公明党が連立を解消する素振りを見せているのだが、そうなると石破内閣以上に高市内閣は法案を通すのが困難な状況に陥るし、選挙で大きな組織票を失うことにもなる。これを回避するために、高市氏が急進右派嫌税排外ポピュリズムを引っ込める可能性はある。高市氏を引き立てていた安倍元総理も、発言は右派嫌税ポピュリズム的である一方、実際の政策運営は公明党の意向も含めて、各方面の政治勢力を協調していた。
しかし、急進右派嫌税排外ポピュリストが高市早苗氏の路線軟化に気づけば、高市非難に転じる可能性もある。現在の「保守」界隈は、公明党への非難も強い。すると、自民党総裁としての高市氏の強みは消え去り、ただの強い党内基盤を持たない首相となる。この場合は少数与党を率いていくのは困難で、早々の退陣を迫られる可能性が高い。
*1ポピュリズムの定義は色々とあり、上と似た定義でもテクノクラートではなく統治エリートが入るわけだが、ポピュリストが統治者になってしまうケースも多々あるので反テクノクラートとしておく。


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