高市早苗氏は本当にcongressional fellowだったのか疑惑が再燃している*1。
私の理解では、congressional fellowはシンクタンクなどのfellowship(研究奨学金制度/教育プログラム)によって、米連邦議会議員事務所もしくは米連邦議会委員会に入って議会活動を学ぶ人のことを指す。議員や議会に雇用はされないが、正規の議会スタッフと同様に身分証明書(Congressional ID Badge / Staff ID)が発行され、本会議場を除く議会施設に入る事ができる。また、議会職員の規則に従う事を非公式に要求される*2。
連邦議員事務所にcongressional fellowとして入る場合は、連邦議員が採用を決めた後、議員の政策秘書(Legislative Assistant)の指導に従い仕事をすることになる。もともと専門職や高度教育を受けた人が参加し、かつ1年から2年間と学生インターンよりは長期間のプログラムになる*3ので、学生インターンよりは高度な業務に従事する。Legislative Assistantから見れば、長期インターンに過ぎないと思うが。
さて、高市氏の著作の説明では、インターンとしてシュローダー下院議員の事務所に入り、そこからcongressional fellowに出世したかのように語られている*4。また、congressional fellowを立法調査官と訳し、アメリカ議会で正式の職員で働いたと、まるで連邦議会職員のように説明されている*5。少なくとも現在の米連邦議会のcongressional fellowの説明から考えると、これらはかなり奇妙だ。
- congressional fellowは連邦議会の正規スタッフではない。「正スタッフ」「正式の職員」になったと主張している。連邦議会(や議員事務所)に給与をもらっていないのだから、そんなはずはない。連邦議会のウェブページを見ても、職員(Employee)と明確に区別されている。議会のIDが発行されたら「正式な議会スタッフ」になると誤解していた(いる)のであろうか。
- congressional fellowは官職ではないので、立法調査官と訳すのはミスリーディング。特別研究員と訳すべきだ。高市氏の著作には研究員という説明もある。カタカナ語でフェローでも良かった。総務大臣のときの説明によると、著作の出版時にcongressional fellowの翻訳を相談した結果とあるが、congressional fellowの法的立場と日本語の「官」の意味を理解していれば避ける表現だ。
- 議会と議員のどちらでフェローをしていたのか不明瞭な表現が多い。アメリカ議会で正式の職員で働いたと言われたら、議会委員会で働く専門職員(Professional Staff Member)か、その職務を遂行する役職になったと理解すると思うが、実際は専門職員でも、その手伝いをする議会委員会にいるcongressional fellowでもなかった。
議員事務所のシニアスタッフがtechnicallyではあるがcongressional fellowであったと証言したので、congressional fellowであった蓋然性は高くなった*6。しかし、高市氏が米連邦議会で正式の職員として働いたという主張が虚偽もしくは誤解、少なくともミスリーディングな表現であるのは変わらない。
*1総務大臣であったとき、congressional fellowではなくただのインターンだったと言われて抗議している(総務省|高市総務大臣閣議後記者会見の概要(平成28年4月22日) )のだが、2026年3月のNY Times誌のシュローダー下院議員の事務所のシニアスタッフだった人物の話をもとにした記事で、インターンとして見做されていたので再燃した。
*2連邦下院規則のVIII. Volunteers, Interns, Fellows, and Detaileesでは、EmployeeとFellowsは異なる身分として説明され、"Technically, House rules cannot be enforced against individuals who are not House employees(拙訳:テクニカルには、議会規則は議会従業員ではない個人に対しては有効ではない)"という記述がある。
*3学生インターンは3ヶ月から半年ぐらいのようだ。なお、高市氏は(議員の推薦状によると)1987年12月から1989年3月まで1年3ヶ月間、議員事務所にいた。
*41989年の著作『アズ・ア・タックスペイヤー: 政治家よ、こちらに顔を向けなさい』に「単なるインターンではなく、正式な議会スタッフである立法調査官の席を狙うようになってからは」「とうとう立法調査官として認められ」(p.71)とある。
*51990年の著作『アメリカの代議士たち: 米国連邦議会の素顔』では、「米国連邦議会の国会特別研究員…研修生とは違う…正スタッフ」であるcongressional fellowになったと言っており、1993年の著作『30歳のバースディ』には「アメリカ議会で日本人で初めて正式の職員で働いた女性」とある。
*6著作の説明などから、松下政経塾から研究費をもらっている事を知った下院議員が、気を効かせてそれをfellowshipと見做し、インターン扱いだった高市氏をcongressional fellowとして採用したことにしたように思える。なお、通常はfellowshipに参加することでcongressional fellowとして事務所に入るそうで、congressional fellowに出世することはない。高市氏も12月に来て1月にcongressional fellowになっており、昇進と言うよりは事務手続きが完了して身分変更になったと理解する方が自然だ。


0 コメント:
コメントを投稿