2025年8月1日金曜日

スウェーデンで男女別枠選考が廃止された理由 — 女子生徒が不利になったから

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スウェーデンは珍しく、男女別枠で入学者数を定めることが、行政命令に反すると言う意味で、はっきり違法と言える国だ。

オランダも女子枠が行政命令で止められたので恐らく違法なのだが、フランスやドイツは反例となる制度があり、スペイン、イタリア、ベルギー、オーストリアあたりはよく知られている裁判や制度が見当たらなかった。

2006年以降、スウェーデンでは高等教育機関への入学許可において性別や民族などによるクォータ制の利用が禁止されている。しかし、これには穴があり、他のすべての要素が同等であり、より男女間のバランスの取れた学生構成を達成することを目的とする場合に限り、性別を選考基準として使用することは合法とされていた。

2007年に44名の女性がスウェーデン農業科学大学(SLU)の獣医学部の選考方法を違法だと訴えた。応募者は圧倒的に女性が多い状況で、男子生徒が女子生徒に優先されていた。成績が同じ応募者の場合、男女で異なるウェイトをつけた抽選を行っていたが、男性の方が6倍、合格を当てやすくなっていた。合格者の成績はすべて最高で、最高成績で不合格になった女子生徒が多発した。判決は単純明快なものではないが、この実質的男女別枠選考がアファーマティブアクションとして機能していないことが重視された*1。男子生徒を増やすという積極的是正措置は、獣医師に男性は十分いるため、不必要だと看做されている。また、スウェーデンにはSLU以外に獣医学部は存在しないことも考慮された。

上述の裁判もあり、2010年にスウェーデン政府は性別を選考基準として使用することを認めないとする行政命令を出した。上のような男女別枠選考は広く使われており、判決からSLUの獣医学部以外が不法であるかは不明ではあったが、2009年の実態で医学、歯学、心理学、法学において女子生徒が不利に扱われていることが判明していた*2

スウェーデンの事例では、SLUの獣医学部の男女別枠選考が男女平等法に反すると看做されたことは言える。しかし、大学入試におけるアファーマティブアクション一般が、スウェーデンの男女平等法に反するのかはよく分からない。女子生徒の入学者の方が少ない時代に男子生徒が訴訟を起こした場合、その違法性は認定されることになったであろうか。裁判での議論からすると疑わしい。行政命令が出るまでの議論でも、女子生徒の方が不利になっていることが重視されており、男子生徒の利益については重視されていない。

英語で発信された断片的な情報を拾っているので誤解が無いとは言えないが、不平等だから違法というような単純明快な議論ではないとは言える。

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