2019年11月13日水曜日

訴求内容と訴求対象に合った、より効果的な表現方法を工夫したら、アイドルと萌え絵の女の子がアイキャッチャーとして残ることもある

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極東ブログのfinalvent氏が「男女共同参画の視点からの公的広報の手引」をひいて、日本赤十字社の「宇崎ちゃんは遊びたい」×献血コラボキャンペーンの絵は好ましくないと主張している*1のだが、少し注意深さが足りなかったようだ。「安易に」「訴求対象」「効果的」に留意して欲しいのだが、よく考えると駄目な事例とは言えないことが分かる。

さて、手引きをよく見ていこう。第5節の「女性をむやみに"アイキャッチャー"にしていませんか?」のところが問題にされているが、「むやみ」「安易に」でなければよいので、絶対に女性をアイキャッチャーにするなとは書いていない。

単に目を引くためや親しみやすさを持たせるために、内容とは関係なく女性の姿や身体の一部をポスターなどで使う場合がありますが、それでは伝えるべき内容が十分に反映された表現とは言えません。

安易に女性をアイキャッチャーとして起用せず、訴求内容と訴求対象に合った、より効果的な表現方法を工夫しましょう。

内容と無関係に、女性の水着姿や、身体の一部などを使うと、「性的側面を強調している」と受け取られるおそれがあります。しかも、本来の伝えたい内容が不明確な広報になっています。

むやみで安易かは、(1)伝えるべき内容が十分に反映されているか、(2)訴求対象に合っているか、(3)より効果的な表現かと言う観点から評価される。

(1)だが、献血ポスターに求められるのは、訴求対象の目を引き、献血と言う慈善活動があることを思い出させるのが目的であり、伝えるべき内容が十分に反映されている。噴き出しの台詞が挑発的なのが気になる人もいるようだが、そういうキャラクターである。日本赤十字社の献血の手順を見ると、献血の副作用や血液の利用目的などについて献血者の同意をとっており、献血者に伝えるべきすべての情報をポスターで伝える必要はないことに注意しよう。

(2)だが、血液がたっぷり取れる若く健康な男性を主な訴求対象にしているので、人気マンガのキャラクターを利用するのは理に適っている。若い健康な女子もこのマンガの愛読者には多いようだ。もっと他の絵柄の方が広く受け入れられると思うかも知れないが、コラボキャンペーンは山のように行われていて、その中のひとつでしかない事に注意しよう。全体で評価すべきだ。なお、人気マンガだけではなく、アイドルやスポーツ選手のポスターもある。

(3)については、外部からは分からない。日本赤十字社は安全で高品質の献血血液を需要に対して十分確保することを基本理念としており、広告効果もこの観点で評価されるべきだが、広告ごとの効果は公表されていない。ただし、クリアファイルなどの記念品の配布をしているので、日赤は人気のある広告は漠然とは*2把握できているはずで、これだけマンガやアニメとのコラボキャンペーンが多いということは、広告効果が高いことが予想される

(1)~(3)を評価すると、駄目と言うか効果的にアイドルと萌え絵の女の子がアイキャッチャーとして残った蓋然性が高い。公的広報の手引を参照する限りにおいては*3、駄目な事例とは言えない。

ところで、日本弁護士連合会は「男女共同参画の視点からの公的広報の手引」の観点から駄目である*4。弁護士に相談するべき問題を抱えているが、弁護士に相談すべきとは認識できていない人に働きかけたいわけで、もっと具体的な問題を想起させるべきでは無いであろうか。

*1漫画『宇崎ちゃんは遊びたい!』と日赤のコラボポスターについて: 極東ブログ

*2もちろん複数のタイプの広告を用意し、ランダム化比較実験などで効果測定を行うなどする方が望ましい。

*3「男女共同参画の視点からの公的広報の手引」とは別のジェンダー表現規制の観点から、否定されることはあり得る。地方自治体のガイドラインでは炎上防止を目的としているのか、目を引くために内容と関係のない女性を登場させることを一律に否定しているものもある。大田啓子弁護士らが女性弁護士がシックなドレスでポーズをとっている特定秘密保護法反対のポスターあたりも全滅するのだが。

*4牟田和恵「『笑顔の女性』を登場させたりすることは『性の商品化』につながります」 松本品川区議「では太田弁護士と共に日弁連を問題視して頂ければ」 - Togetter

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