2021年4月から2022年4月上旬までの約1年間公開されたオープンレター「女性差別的な文化を脱するために」は、その内容の異様さ*1の他に、賛同者の登録方法の杜撰さが問題になっていた。
登録フォームではメールアドレスの入力は任意であり、登録したメールアドレスに確認メールが来ることもなかった。覚えのない「賛同者」が3名出た後に、
ご本人によるものではないことが判明した賛同については削除の対応をしています。賛同した覚えがないのにお名前が掲載されている方は stop.internetharassment[at]gmail.com までご連絡ください。ご本人からの連絡であることを確認の上、お名前を削除します。
と追記されただけだ。この追記後4週間ぐらいで、公開中止となる*2。
1200名を超える賛同者一覧をチェックするほど興味関心があったり、そういう知人がいれば、勝手に登録されていれば気づくであろうが、そういうケースは稀であろう。現在まで「賛同者」にされていることに気づかない事は大いにありえる。実際、ここ3日間で2名、新たな覚えのない「賛同者」が出てきた。
この真実相当性のない賛同者一覧だが、道義的問題、法的なリスクがある。他者を他者の信条と異なる考えを持っていると吹聴することは、社会的評価の低下をもたらしうるからだ。だいぶ状況は異なるのだが、あるフェミニストがアンフェのようなことを言ったと誤認させるようなツイートを行い不法行為を認定された人がいる。オープンレター賛同者に社会的スティグマを負わせ続けたいと言う思いで転載されたと思わしき賛同者リストも存在し、実際にそれを引いてオープンレター賛同者だと罵る人も散見される。
名誉既存や侮辱になる文の転載は、不法行為になる。大規模掲示板2chの記事をYahoo!掲示板に転載した事件に関し、名誉毀損となる文を転載した場合は、転載者の不法行為とした裁判例がある。なお、改変箇所を明記した、著作同一性を損なわない改変は、道義的にも法的にも問題とされない。プライバシー保護や名誉毀損の回避のために、実名をAやBに置き換えるなどの方法で、改変したことがわかるように修正することはよくある。
よく似た状況の先行事例があるわけではなく予見可能性は低いが、オープンレターの賛同者一覧を参照する場合は、その信憑性が低いことを明記しなければ、不法行為になる法的リスクがある。
使い道の無い賛同者リスト
法的リスクを犯してまで、参照しなければならない必要もない。賛同者一覧に含まれているだけでは、誰かをオープンレターの賛同者として批判するのに十分ではない。本人に本当にそうか聞くか、SNSのポストなどからオープンレターに賛意を表す文を探さなければならず、逆にそれがあれば賛同者一覧にリストされているという情報は不要だからだ。ヤバい人がいたので検索したらオープンレターの賛同者だったと言う話を見かけるが、それはリストなしにヤバい人であることがわかる証左でもある。
私的制裁を加えるために使うべからず
賛同者リストを転載している人々がどれぐらい自覚的かは分からないが、賛同者をリストして社会的スティグマを負わせようと言う動機があるように思える。当時は賛同していたが、オープンレター賛同者へのSNSでのアグレッションを見て怯み、身に覚えがないと過去を偽っているという(名誉毀損になりかねない)憶測も飛んでいる。これは敵を見逃さず私的制裁を加えたいという願望の表れだ。
オープンレター賛同者の転向は、それが表面的なものであるにしろ、オープンレターの主張に反対する立場から言えば歓迎すべきで、それ以外を求めるべきではない。オープンレターは自分たちと異なる考えの人々のキャンセル、私的制裁を呼びかけていることが問題とされた。内心どう思っているにしろ、私的制裁で言論の自由を脅かすことを肯定されなければ、反対派としては十分な成果だ。
しっぺ返し戦略のつもりかも知れないが、賛同者に私的制裁を加えてしまえば、同じ穴の狢となる。当時流行っていた反転可能性テストをパスしない考え方と言ってもよいが、自由な言論を支持するという自己の尊厳を傷つけることになる。


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